「やり過ごす 」の意味とは?例文・使い方・類義語・由来を徹底解説!

日常生活やビジネスの場面で、何かを「そのまま受け流す」ような状況に直面したことはありませんか?

余計なトラブルを避けるため、あえて深入りせずに対応することも時には必要です。

「やり過ごす」は、そんな場面でよく使われる言葉のひとつ。

本記事では、その使い方や例文、類義語、由来などを徹底解説します。適切な場面でスマートに使いこなせるよう、一緒に学んでいきましょう!

「やり過ごす 」の意味・読み方

意味:①ある状態が経過するにまかせる。②あとから来たものを先に通らせる。 出典:スーパー大辞林3.0

「やり過ごす(やりすごす)」は、「ある出来事を深く関与せずに受け流す」「事態が経過するのを静かに待つ」といった意味を持つ言葉です。

広辞林には「ある状態が経過するにまかせる」「あとから来たものを先に通らせる」と二つの意味が記されていますが、本記事では前者の意味に焦点を当てて解説します。

この表現は、物事に過剰に反応せず、冷静に対処する姿勢を表す場面で使われることが多く、特にトラブルを避けたり、感情を抑えたりする状況で用いられます。

例えば、人間関係のもつれやビジネスシーンでの難しい局面において、「ここはやり過ごそう」と判断することがあるでしょう。

次の章では、「やり過ごす」の具体的な使い方や例文を紹介しながら、そのニュアンスをさらに掘り下げていきます。

「やり過ごす 」の例文と使い方

「やり過ごす」は、トラブルや困難な状況に深く関わらずに受け流す、あるいは何かをしながら時間が過ぎるのを待つといった場面で使われます。

以下に、具体的な例文を挙げながら、その使い方を説明します。

①「その場をやり過ごす」

👉 困難な状況を無難に切り抜けるときに使う表現

上司に怒られたが、余計なことは言わずにその場をやり過ごした
彼の冗談が場違いだったが、みんな笑ってその場をやり過ごした

②「毎日やり過ごす」

👉 何もせずに日々を過ごす、退屈な日常を意味することが多い

やる気が出ず、ただなんとなく毎日をやり過ごしている
充実した生活を送りたいのに、仕事に追われて毎日やり過ごすだけになっている。

③「適当にやり過ごす」

👉 真剣に向き合わず、軽く流すときに使う表現

難しい話だったので、適当に相づちを打ってやり過ごした
面倒な仕事を頼まれたが、適当にやってやり過ごすことにした。

④「できる社員はやり過ごす」

👉 優秀な人ほど、無駄な争いやトラブルを避けることを示す表現

できる社員はやり過ごすべき場面を心得ている。
会議で無駄な議論が続いたが、できる社員はやり過ごして本題に集中していた。

⑤「時間をやり過ごす」

👉 時間を何かしながら過ごす、あるいは暇をつぶすときに使う表現

電車の待ち時間を、読書をしながらやり過ごした
会議の開始まで時間があったので、カフェでコーヒーを飲みながらやり過ごした

⑥「気まずい時間をやり過ごす」

👉 会話が途切れたり、雰囲気が悪い状況を乗り切るときに使う表現

友人と意見が食い違い、無言のまま気まずい時間をやり過ごした
初対面の人と二人きりになり、スマホをいじりながら気まずい時間をやり過ごした

「やり過ごす」は、状況に応じて「トラブルを避ける」「暇をつぶす」「適当に対応する」などの意味で使われます。

日常会話やビジネスシーンでも役立つ表現なので、適切な場面で使いこなせるようにしましょう!

「やり過ごす 」の同義語・言い換えや類義語は?

「やり過ごす」のイメージ画像(スルー)

「やり過ごす」という表現は、ある出来事に深く関与せずに流したり、時間が経つのを待ったりする意味です。

このような状況を表すために使える同義語や類義語は多くあります。

それぞれの言葉が持つ微妙な違いとともに、意味や例文を紹介します。

同義語・言い換え・類義語意味例文
受け流す(うけながす)相手の言動や状況を気にせず、何も反応せずにスルーすること。
  • 上司の厳しい指摘にあいまいな答えで受け流してその場をしのいだ。
  • 彼の嫌味にはいちいち反応せずに、受け流すのが一番だ。
流す(ながす)深く考えずに、相手の言葉や出来事をそのまま流してしまうこと。
  • 余計なことを言わず、適当に流しておけばいい
  • 彼の失礼な発言は、気にせず流すことにした
その場を繕う(そのばをつくろう)問題を表面的に収め、その場をうまく切り抜けること。
  • トラブルが起きたが、その場を繕って事なきを得た。
  • 彼はその場を繕おうと、話題を変えて場を和ませた。
その場をごまかす(そのばをごまかす)問題を誤魔化してその場をしのぐこと。
  • 質問に答えられなかったが、その場をごまかすために別の話題を出した。
  • 彼はミスを隠してその場をごまかすことに成功した。
上辺を整える(うわべをととのえる)表面的に物事を整え、問題の本質に触れずその場をしのぐこと。
  • 会議の前に上辺を整えて、誰も気づかないようにした。
  • 仕事を急いで上辺を整えるだけで、根本的な問題には手を付けなかった。
上辺を取り繕う(うわべをとりつくろう)表面的に物事を修正して、問題を隠すこと。
  • 彼は上辺を取り繕うために、全員が納得するような言い訳をした。
  • 少しのミスを上辺を取り繕って乗り切った。
見て見ぬふりをする(みてみぬふりをする)問題を知っていても、意図的に無視してその場を流すこと。
  • 彼のミスに気づいたが、あえて見て見ぬふりをした
  • 事故があったが、彼は見て見ぬふりをして何事もなかったかのように振舞った。
傍観する(ぼうかんする)問題や状況をただ見守るだけで、何もしないこと。
  • 彼はトラブルが起きても、傍観するだけだった。
  • 社会問題に対して、ただ傍観することしかできない自分に気づいた。
スルーする
ややカジュアルで、特に無視する、または意図的に触れないといった意味で使われます。
  • 彼の嫌味にはいちいち反応せずに、スルーするのが一番だ。
  • 面倒な質問をスルーして、別の話題に切り替えた。

「やり過ごす」の同義語や類義語には、問題を避けたり、一時的に流すことでその場を切り抜けるニュアンスが込められています。

これらの表現は、状況に応じて微妙に使い分けが必要です。

「受け流す」「流す」などは、特に相手の言動に反応しないというニュアンスが強い一方で、「その場をつくろう」「その場をごまかす」などは、表面的に状況を収めることに重点を置いています。

それぞれの表現を使い分けることで、意味やニュアンスをより正確に伝えることができます。

「やり過ごす 」の由来・語源は?

「やり過ごす」は、「やる(行う、送る、行かせる)」と「過ごす(経過させる)」が組み合わさった言葉です。

語源をたどると、古くから使われてきた日本語の動詞の組み合わせによって生まれた表現です。

  • やる:本来は「放つ」「進める」「行う」などの意味があり、「やり直す」「やり遂げる」などの言葉にも使われています。
  • 過ごす:「時間が経過する」「状態を続ける」などの意味を持ち、「のんびり過ごす」「見過ごす」といった表現にも見られます。

「やり過ごす」は、これらの意味が結びつき、「何かを受け流す」「その場を無難に切り抜ける」といったニュアンスで使われるようになりました。

この言葉の背景には、日本の伝統的な価値観が関係しています。

例えば、江戸時代の武士や商人の間では、不要な対立を避けるために、問題を無理に解決しようとせず、自然と収まるのを待つという考え方がありました。

特に商人の間では、感情的な対立を避け、冷静に対応することが円滑な商売につながるとされ、「やり過ごす」ことが重要視されていました。

また、戦国時代には、敵の攻撃を真正面から受けずに、戦況を見極めつつ「やり過ごす」戦術が取られることもありました。

これも「やり過ごす」が持つ「衝突を避け、状況が好転するのを待つ」という意味につながります。

「やり過ごす 」に関するQ&A

  • 「やり過ごす」と「見過ごす」の違いは?
  • 「やり過ごす」の対義語は?
  • 「やり過ごす」はポジティブな意味で使える?
  • 「やり過ごす 」を英語で言うと?

「やり過ごす 」に関するよくある疑問は上記の通りです。

ここからそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。

「やり過ごす」と「見過ごす」の違いは?

「やり過ごす」と「見過ごす」は似た表現ですが、それぞれ異なる意味を持つ言葉です。

ここでは、その違いを詳しく解説し、適切な使い分けを紹介します。

1. 「やり過ごす」の意味

「やり過ごす」は、これまで解説してきましたように、ある状況や出来事を積極的に対処せずに、受け流したり、時間が経つのを待ったりすることを指します。

自分の意思で関わらずに済ませる、または流れに任せるニュアンスがあります。

例文:

  • 彼の嫌味には反応せず、適当にやり過ごした
  • 雨が止むまでカフェで時間をやり過ごすことにした。

このように、「やり過ごす」は意図的にその場を乗り切るという意味合いを持ちます。

2. 「見過ごす」の意味

「見過ごす」は、本来気づくべきことを見落とす、または意図的に見なかったことにすることを指します。

注意不足や意図的な無視というニュアンスが含まれます。

例文:

  • 彼の書類には重大なミスがあったが、うっかり見過ごしてしまった
  • 不正行為を見過ごすことは許されない。

このように、「見過ごす」は何らかの対象を目にしながらも、それを認識しないか、あるいは認識しつつも対応しないことを意味します。

3. 「やり過ごす」と「見過ごす」の違い

やり過ごす見過ごす
意味事態に深く関与せず、そのまま流す目にしながらも気づかない、または意図的に無視する
ニュアンス積極的に関与しないことで場をしのぐ注意不足や意図的な無視
「トラブルをやり過ごす」→トラブルが過ぎるのを待つ「ミスを見過ごす」→ミスに気づかない(または気づいても対応しない)

4. 使い分けのポイント

「やり過ごす」は、自分の意思で状況を受け流すときに使い、「見過ごす」は、不注意や意図的な無視によって気づかなかったときに使います。

誤用例: × 彼の発言を見過ごした。(→ 受け流したなら「やり過ごす」) × ミスをやり過ごした。(→ 気づかなかったなら「見過ごす」)

以上の通り、「やり過ごす」は「積極的に関与せずに流す」、「見過ごす」は「気づかない、または意図的に無視する」という違いがあります。

適切に使い分けることで、より正確な表現ができるようになります。

「やり過ごす」の対義語は?

以下に、「やり過ごす」と反対の意味を持つ言葉を紹介します。

「立ち向かう(たちむかう)」

問題や困難に対して積極的に向き合うことを意味します。

例:「彼は困難に立ち向かう勇気を持っている。」

「対処する(たいしょする)」

何か問題や出来事に適切な対応をすることを指します。

例:「緊急事態には冷静に対処することが大切だ。」

「受け止める(うけとめる)」

事態や相手の言葉を真正面から受け入れることを表します。

例:「彼女はその事実をしっかり受け止めた。」

「介入する(かいにゅうする)」

無関係を装わずに、自ら積極的に関与することを指します。

例:「教師が生徒のトラブルに介入した。」

「向き合う(むきあう)」

問題や人と誠実に向き合うことを表します。

例:「自分の過去と向き合うことで成長できる。」

「やり過ごす」はポジティブな意味で使える?

「やり過ごす」は、場合によってはポジティブな意味で使われることもあります。

ネガティブな印象の「やり過ごす」

「やり過ごす」は「問題に正面から向き合わず、逃げる」といった消極的な意味で捉えられることが多いです。

例文:

仕事のミスをやり過ごしてしまい、後で大きな問題になった。
彼はいつも困難をやり過ごすだけで、根本的な解決をしようとしない。

このように、「やり過ごす」が「責任回避」や「消極的な態度」を表すこともあります。

ポジティブな「やり過ごす」

一方で、「やり過ごす」は「冷静に対処する」「問題を大きくせずに乗り切る」といったポジティブな意味でも使えます

例文:

余計な対立を避けるために、彼の発言をやり過ごした。
混乱を避けるために、その場はうまくやり過ごした。

このように、冷静に対処し、不要な争いを避けるというニュアンスで使われることもあります。

「やり過ごす」が適切な状況

「やり過ごす」がポジティブに働くのは、以下のような場合です。

  • 不要な衝突を避けるために流す → 相手の怒りや嫌味を刺激しないためにスルーする。
  • 一時的に様子を見るために静観する → 過度な介入をせずに、状況を見極める。
  • 時間が解決することを待つ → 感情的にならず、落ち着くのを待つ。

以上の通り、「やり過ごす」は、時には消極的な態度と捉えられることもありますが、状況によっては「冷静な判断」「適切な対応」としてポジティブに働くこともあります。

適切に使い分けることで、より良い表現ができるでしょう。

「やり過ごす 」を、英語で言うと?

「やり過ごす」を英語で表現する場合、状況に応じて下記のように様々な表現があります。

英語表現意味例文
Get through the situation その場をなんとかやり過ごすI decided to stay silent and get through the situation.
(私は黙ってその場をやり過ごすことにした。)
Ride it out 困難な状況をやり過ごすIt was an awkward moment, but I managed to ride it out.
(気まずい瞬間だったが、なんとかやり過ごした。)
Let it pass流れに任せてやり過ごすHe ignored the rude comment and let it pass.
(彼は失礼な発言を無視してやり過ごした。)

このように、英語でも「やり過ごす」のニュアンスに合った表現を適切に使い分けることが重要です。

まとめ:「やり過ごす 」の意味・例文を理解しよう

「やり過ごす」という言葉には、直面した困難やストレスに対して無理に反応せず、冷静に受け流すという意味が込められています。

人生の中では、すべての問題に立ち向かう必要はなく、時には状況を流れに任せることが賢明な選択となることもあります。

過度に反応してしまうと、無駄にストレスを抱えたり、余計な摩擦を生んでしまうこともあるため、冷静にやり過ごすことが心の平穏を保つ秘訣ともいえるでしょう。

もちろん、常にやり過ごすだけでは問題を解決できませんが、必要な時には一歩引いて状況を見守り、無理に戦わず流れに任せることで状況が好転する場合もあります。

日々の忙しさに追われる中で、意識的に「やり過ごす」力を養うことが、心の余裕を生み、より穏やかな人生につながるのではないでしょうか。