日常生活や職場で「襟を正す」という言葉を耳にすることがあります。
この言葉には、一見シンプルなイメージの中に、深い意味と日本人特有の文化的な価値観が込められています。
礼儀を重んじる日本社会では、特に重要な場面や改めて態度を整える必要があるときに使われる表現です。
この記事では、「襟を正す」の正確な意味や使い方を例文とともに解説します。
また、類義語や由来についても触れ、この言葉の背景にある価値観をより深く理解できるようにしていきます。
「襟を正す」という表現を通じて、日常やビジネスシーンでの活用方法を一緒に学びましょう。
慣用句「襟を正す 」の意味・読み方
意味:姿勢や服装をきちんとする。//気持ちを引き締める。 出典:デイリーコンサイス国語辞典
「襟を正す」(えりをただす)は、日常生活や仕事の場面でよく使われる表現です。
この言葉には、文字どおりの意味と比喩的な意味の両方が込められています。
ここでは、その詳しい意味と使い方について見ていきましょう。
「襟を正す」は「えりをただす」と読みます。
「襟」(えり)はシャツや着物の首回りの部分を指し、「正す」(ただす)は整える、修正するという意味です。
この慣用句は、文字通り服装や身だしなみを整える行為を表しますが、次の通り心や態度を改める・引き締めるという比喩的な意味で使われることが普通です。
- 態度や行動を改める
自分の行動や態度が適切でないと感じたとき、それを見直してきちんとしたものに改めることを指します。反省や自己改善を表す言葉として使われることが多いです。 - 礼儀正しく振る舞う
相手に対して失礼のないよう、きちんとした態度で接することを指します。特に、目上の人やフォーマルな場面で重視される姿勢を表しています。 - 気持ちを引き締める
重要な場面や新しい挑戦に臨む際に、心を整えて集中力を高める行動を指します。この場合、「襟を正す」は気合いや緊張感を象徴しています。
「襟を正す 」を使った例文を紹介
「襟を正す」は、日常やビジネスシーンで幅広く使われる表現です。
その意味に応じた具体的な使い方を例文で見ていきましょう。
1. 態度や行動を改める場合
2. 礼儀正しく振る舞う場合
3. 気持ちを引き締める場合
小学生にも分かる「襟を正す 」を使った例文を紹介
「襟を正す」という言葉は、身だしなみや態度を整えることを意味します。
ここでは、小学生にも分かりやすい例文を通して、この言葉の使い方を学んでいきましょう!
1. 態度や行動を改める場合
2. 礼儀正しく振る舞う場合
3. 気持ちを引き締める場合
これらの身近な例文を通じて、小学生でも「襟を正す」の意味や使い方を具体的に理解できるといいですね!
「襟を正す 」の言い換えや類義語は?
ここでは、「襟を正す」の表現に近い意味を持つ言い換えや類義語を紹介します。
言い換え・類義語 | 意味 | 例文 |
気を引き締める(きをひきしめる) | 「襟を正す」と同様に、気持ちを引き締めて態度を改める意味で使われます。 緊張感を持ち、自分を律するというニュアンスが強調されます。 | 試験を前にして、気を引き締めて勉強を始めた。 |
身を引き締める(みをひきしめる) | 「身を引き締める」も、態度や心構えを改めることを意味します。「襟を正す」と同じく、外見や態度を整えることを示唆しています。 | 大事な会議に向けて、身を引き締めて臨んだ。 |
心を改める(こころをあらためる) | 精神的に自分を正す、または態度を改めるという意味で使われます。「襟を正す」と同じく、内面の変化に焦点を当てた言い換えです。 | 過去の行いを反省して、心を改める必要がある。 |
初心に帰る(しょしんにかえる) | 最初の頃の純粋な気持ちや決意を再確認するという意味です。元々の意志を思い出し、再度態度を正すという点で「襟を正す」と似た意味を持ちます。 | 初心に帰って、プロジェクトの目的を改めて意識しよう。 |
反省する(はんせいする) | 自分の行動や考えを振り返り、改善しようとする意味で使います。「襟を正す」ほどの強い緊張感はないものの、態度を改めるという意味で共通点があります。 | 今までの過ちを反省して、これからはもっと慎重に行動する。 |
態度を改める(たいどをあらためる9 | 単に行動や振る舞いを変えるという意味ですが、「襟を正す」と近い意味で使われることがあります。特に、周囲への印象を良くするために自分の態度を改める時に使います。 | 仕事をする上で、態度を改めることが求められる。 |
「襟を正す 」の出典・由来は?
「襟を正す」という表現は、紀元前1世紀初め頃に司馬遷によって書かれた中国の歴史書『史記』の日者列伝に記されたエピソードに由来します。
この言葉の背景には、宋忠(ソウチュウ)と賈誼(カギ)という二人の知識人が、易者である司馬季主(シバキシュ)を訪ねた際の出来事があります。
エピソードの概要
『史記』の日者列伝では、宋忠と賈誼が司馬季主を訪ね、運命や行いについての問答を行う場面が描かれています。
この問答の中で、二人は司馬季主の深い知識と洞察に圧倒され、自分たちの態度を改める場面があります。
このとき、記述されているのが以下のフレーズです。
「宋忠賈誼、瞿然而悟 獵纓正襟危坐」(宋忠と賈誼は目を見開いて悟り、冠の紐を整え、襟を正し、姿勢を正して座った。)
この行為は、司馬季主の話に敬意を表し、自らの態度を正す象徴的な行動として描かれています。
「襟を正す」の象徴的な意味
このエピソードにおける「襟を正す」は、外見を整える行為であると同時に、自分の態度や心構えを見直し、引き締める行動を意味しています。
この行動は、礼儀を尽くし、相手への敬意を示す象徴として強調されています。
日本では、このエピソードの背景を直接知る人は少ないものの、「襟を正す」という表現は、比喩的に使われるようになりました。
特に、自分の行いや態度を改め、心を引き締めるときの言葉として、文化の中に定着しています。
「襟を正す 」に関するQ&A
- 「襟を正す 」の対義語は?
- 「襟を正す 」を英語、中国語で言うと?
「襟を正す 」に関するよくある疑問は上記の通りです。
このあとそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。
「襟を正す 」の対義語は?
「襟を正す」は、自分の態度や行動を改めることや、礼儀正しい振る舞いを意識する行為を指します。
その対義語として「だらしない態度や礼儀を欠いた振る舞い」を表す表現にはには以下のようなものがあります。
対義語 | 意味 | 例文 |
だらしない態度を取る | 「襟を正す」がきちんとした態度を取ることを意味するのに対し、「だらしない態度を取る」は礼儀や身だしなみを意識しない状態を指します。 | 面接の際にだらしない態度を取ると、悪い印象を与えてしまう。 |
気を抜く | 「襟を正す」が緊張感を持つことを表すのに対し、「気を抜く」は注意を怠り、リラックスしすぎた状態を意味します。 | 試験の直前に気を抜いてしまい、大事な問題を間違えてしまった。 |
無作法(ぶさほう) | 「襟を正す」が礼儀正しさを象徴するのに対し、「無作法である」は相手に対して礼儀を欠く行動や態度を指します。 | 食事の席で無作法であることは、周りの人を不快にさせる。 |
「襟を正す 」を、英語、中国語で言うと?
「襟を正す」を英語や中国語に訳すと以下のようになります。
【英語表現】
Straighten (Fix) one’s collar/tie(襟/ネクタイを真直ぐにする、直す) | 「襟を正す」を直訳した表現で、礼儀や身だしなみを整える行動を指します。 | Before entering the meeting room, he straightened his collar to make a good impression.(会議室に入る前に、彼は良い印象を与えるために襟を正した) |
shape up(しっかりやる、行ないを改める) | 「きちんと振る舞う」や「襟を正す」という意味があります。態度を正してシャキッとすることを表現する際に使える英語フレーズです。 | He needs to shape up if he wants to keep his job. (彼は仕事を維持したいなら、態度を正さなければならない) |
straighten oneself | straightenは真っ直ぐにするや整えるという意味があります。自分自身の気持ちを引き締める時や背筋を伸ばすような際に使います。 | It’s time to straighten up and focus on your goals. 今こそ襟を正して目標に集中する時だ。 |
【中国語】
正襟危坐 (zhèng jǐn wēi zuò) | 「襟を正し、姿勢を正して座る」という『史記』の記述に基づいた表現 | 他在會議開始前正襟危坐,顯得格外莊重。(ミーティングが始まる前、彼は正座して厳粛な表情をしていた。) |
修身正心 (xiū shēn zhèng xīn) | 自分の行いを改め、心構えを正すという意味の成語です。 | 修身正心是每個人應該追求的生活態度。(心身の鍛錬は、誰もが人生で追求すべき姿勢である。) |
改過自日 (gǎi guò zì rǔ) | 自分の過ちを直し、態度を改めることを指します。 | 過ちを犯したのであれば、それを正すべきであり、同じ過ちを繰り返してはならない。(過ちを犯したのであれば、それを正すべきであり、同じ過ちを繰り返してはならない。) |
まとめ:「襟を正す 」の意味・例文を理解しよう
「襟を正す」という表現は、物理的には衣服の襟をきちんと直すことを指しますが、比喩的には「態度や姿勢を改めて真面目に取り組む」という意味で広く使われます。
何かに臨む前に心構えを整える場面や、緊張感を持って責任を果たす必要がある場面で使われる便利な言葉です。
「襟を正す」という言葉には、自分を見つめ直し、成長するためのヒントが詰まっています。
日常生活や仕事の中で、ふとした瞬間にこの言葉を思い出し、心を整えてみてはいかがでしょうか。