日本には「悪事千里を走る」という古くから伝わることわざがあります。
この表現は、悪い行いは瞬く間に世間に知れ渡り、広まってしまうことを意味します。
善行よりも悪事の方が目立ちやすく、人々の噂や話題になりやすいのは、現代社会においてもよく見られる現象です。
本記事では、このことわざの具体的な意味や使い方を紹介し、類義語や英語表現、さらには日常生活での例文を交えて詳しく解説していきます。
故事成語「悪事千里を走る」の意味・読み方
意味:悪事はたちまち知れ渡る。 出典:デイリーコンサイス国語辞典
「悪事千里を走る」(あくじせんりをはしる)は、悪い行いはたちまち遠くまで広まるという意味を持つ故事成語です。
この表現は、人の悪い噂や不正は非常に早く広まり、多くの人に知れ渡ることを表しています。
「千里」という距離は、単に非常に遠い距離を表す比喩であり、悪事がどれほど早く広がるかを強調しています。
読み方としては、「あくじせんりをはしる」となり、「悪事(あくじ)」は悪い行為、「千里(せんり)」は非常に遠い距離、「走る(はしる)」は物理的な速さではなく、情報の伝達の速さを示しています。
この言葉は古くから使われており、現代でも悪い行いやスキャンダルがすぐに世間に広まるという状況を説明する際に使われます。
「悪事千里を走る」の例文を紹介
「悪事千里を走る」は、悪い行いがすぐに人々に知れ渡るという意味を持つことわざです。
小学生にも分かりやすい例文も紹介していますので、参考にしてくださいね。
次に、小学生にも分かりやすい例文を紹介します:
「悪事千里を走る」の使い方
「悪事千里を走る」は、悪い行いがすぐに広まることを強調したい場面で使われることわざです。
この表現は、主に悪い噂やスキャンダル、不正行為が一気に広がる状況を説明するために使われます。
日常会話からビジネスシーン、ニュース報道に至るまで、幅広い状況で使用されることが多いです。
使い方のポイント:
- 悪い行動や出来事が広まる時に使用
「悪事千里を走る」は、誰かが行った不正や失敗が、すぐに他人に知られる状況で用いられます。
例えば、会社で不正が発覚して噂が広まる場合や、学校でのいじめやいたずらがクラス中に知れ渡るといった場面に適しています。
例文:彼の不正行為はすぐに会社中に知れ渡り、「悪事千里を走る」という状況になった。
- 物理的な速さではなく、情報の伝達の速さを示す
このことわざは、情報や噂の広がり方に重点を置いているため、物理的な「走る」ではなく、抽象的に「広まる」という意味で使われます。
例文:学校でいたずらをした子供の話が、すぐにクラス全員に伝わり、まさに「悪事千里を走る」だと思った。
- 批判や戒めとして使用されることが多い
多くの場合、「悪事千里を走る」は誰かの悪行に対して戒めの意味を込めて使われます。
悪事が簡単に隠せないという教訓的なニュアンスも含んでいるため、道徳的なアドバイスとしても使われます。
「悪事千里を走る」の同義語・類義語
「悪事千里を走る」と同じように、悪事や噂が広まることを表す日本のことわざや表現があります。
これらの言葉を知ることで、さまざまな状況に応じた言い換えが可能になります。
ここでは、それぞれの同義語・類義語を使った例文も紹介します。
同義語・類義語 | 意味 | 例文 |
人の口に戸は立てられぬ(ひとのくちにとはたてられぬ) | 人の噂話や秘密を完全に封じ込めることはできない、という意味です。誰かが一度話してしまうと、それが広まるのを防ぐことはできないという点で、「悪事千里を走る」と類似しています。 | 彼は友達に秘密を話してしまったが、結局「人の口に戸は立てられぬ」というように、その話はすぐに広まってしまった。 |
隠すより現る(かくすよりあらわる) | 悪事や秘密は隠そうとしても、かえって表に出てしまうことが多いという意味です。悪事が自然に世間に知れ渡る様子を表す点で、「悪事千里を走る」と同じ趣旨を持ちます。 | 彼女は嘘をついていたが、「隠すより現る」というように、真実はすぐに明らかになった。 |
人の噂も七十五日(ひとのうわさもしちじゅうごにち) | 人の噂は一時的なものだが、その期間は非常に盛んに広まるという意味です。噂が広がる速さという点では「悪事千里を走る」に通じますが、七十五日経てば収まるという意味も含んでいます。 | 最近のスキャンダルも「人の噂も七十五日」で、しばらくすれば皆忘れてしまうだろう。 |
隠れたるより見るるはなし(かくれたるよりみるるはなし) | 隠していることがあれば、かえってそれが表に出やすい、という意味です。人が隠そうとする悪事や秘密が結局は広まることを示すため、「悪事千里を走る」と関連した意味を持っています。 | 彼の行動は誰にも知られていないと思っていたが、「隠れたるより見るるはなし」のように、すぐにバレてしまった。 |
「悪事千里を走る」の由来・語源
「悪事千里を走る」は、悪い行いは非常に速く知れ渡ることを表すことわざです。
この表現の由来や語源について詳しく見てみましょう。
「悪事千里を走る」の由来として、中国の古い書物『北夢瑣言(ほくむさげん)』(孫光憲(896年—968年)著)が挙げられます。
この書物には、「好事門を出でず、悪事千里を行く」という一文が含まれています。
意味としては、
「好事門を出でず」: 良い行いや善行は、世間に伝わることが少ない。良いことは目立たず広まらないということを示しています。
「悪事千里を行く」: 悪い行いは、あっという間に広まる。悪事が遠くまで、また広範囲にわたって速く伝わる様子を表しています。
この一文は、悪い行いが良い行いに比べて圧倒的に速く広まるという事実を示し、結果として「悪事千里を走る」という表現が広く使われるようになりました。
『北夢瑣言』の一文は中国で生まれたことわざの一部で、このことわざが日本にも伝わり、悪い行いがすぐに広まるという状況を説明するために使われるようになりました。
「悪事千里を走る」に関するQ&A
- 「悪事千里を走る」の反対の意味・対義語は?
- 「悪事千里を走る」を英語・中国語で言うと?
「悪事千里を走る」に関するよくある疑問は上記の通りです。
ここからそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。
「悪事千里を走る」の反対語・対義語は?
「悪事千里を走る」は、悪い行いはすぐに知れ渡ることを表すことわざです。
これに対して、良い行いや善行が広まりにくい、または速く広がらないことを表す反対語や対義語について見てみましょう。
反対語・対義語 | 意味 | 例文 |
好事門を出でず(こうじもんをいでず) | この表現は、良い行いや善行は世間に伝わりにくい、または広まりにくいことを意味します。つまり、良いことが外に出て広がることは少ないという意味です。「悪事千里を走る」と対照的に、良いことは目立たず広まりにくいということを示しています。 | 彼の親切な行動は周りの人々に評価されているが、やはり「好事門を出でず」で、大きな話題にはならない。 |
人の噂も七十五日(ひとのうわさもななじゅうごにち) | このことわざは、噂や話題は時間が経つにつれて冷めるという意味です。つまり、悪い噂が広がるのは早いが、やがてその影響が薄れていくことを示しています。「悪事千里を走る」の対義語として、噂が長続きしないことを表します。 | 最近のスキャンダルも「人の噂も七十五日」で、しばらくすれば皆忘れてしまうだろう。 |
「悪事千里を走る」を英語・中国語で言うと?
この章では「悪事千里を走る」に対応する英語や中国語の表現を見てみましょう。
<英語での表現>
英語 | 意味 | 例文 |
Bad news travels fast. | 「悪いニュースはすぐに広まる」という意味で、悪い情報が迅速に広がることを意味し、「悪事千里を走る」と同様の意味を持っています。 | When there’s a scandal in the office, you can be sure that bad news travels fast.(オフィスでスキャンダルが起きれば、悪いニュースはすぐに伝わる) |
Gossip travels fast. | 「噂はすぐに広まる」という意味で、「悪事千里を走る」と同様の意味を持っています。 | In a small town, gossip travels fast, so everyone knew about the new couple within hours.(小さな町では、ゴシップはすぐに広まるので、誰もが数時間以内に新カップルのことを知っていた。) |
<中国語での表現>
坏事传千里(huài shì chuán qiān lǐ) | これは文字通り「悪い事は千里を伝わる」と訳せるもので、悪いニュースや悪行が遠くまで広がることを意味します。「悪事千里を走る」と非常に近い意味です。 | 最近的丑闻真是坏事传千里,几乎每个人都知道了。 (最近のスキャンダルはあまりにもひどいので、ほとんどの人が知っている。) |
恶事传千里”(è shì chuán qiān lǐ) | こちらも同じ意味で使われる表現。具体的に「悪い事が千里を伝わる」という意味で、悪い行いが速く広まることを表しています。 | 他的坏行为真的恶事传千里,大家都听说了。 (彼の悪行は悪を蔓延させ、誰もがその噂を耳にする。) |
まとめ:「悪事千里を走る」の例文・意味を理解しよう
「悪事千里を走る」とは、悪い行いが瞬く間に広まることを意味します。
この故事成語は、悪い噂や情報がどれほど早く簡単に拡散するかを教えてくれます。
善行も同様に世間に早く広まると良いですが、実際には悪いことの方が広まりやすいという現実を知り、慎重に行動することが大切です。
悪事が世間に速く広がりやすい現実を受け入れつつ、それでもあきらめず善行が広まるよう一人一人努めることが、良い社会作りにつながります。