日常会話やビジネスシーンで耳にすることのある「手持ち無沙汰」という表現。
なんとなく意味は分かるけれど、いざ自分で使おうとすると「本当にこの使い方で合っているのかな?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「手持ち無沙汰」という言葉の正しい読み方や意味、使い方の例文、さらには類語や対義語、由来、英語での表現まで幅広く解説します。
言葉のニュアンスを理解して使いこなせるようになれば、会話や文章表現がより自然で豊かになります。
慣用句「手持ち無沙汰」の読み・意味は?
<名・ダ> することがなくて退屈なこと。 出典:デイリーコンサイス国語辞典
「手持ち無沙汰(てもちぶさた)」は、何もすることがなくて暇をもてあましている様子、または落ち着かず所在なげにしている状態を表す言葉です。
たとえば、会議の開始を待つ間にすることがなくスマホを触ったり、待ち合わせで時間を持て余したりしているときの状況を「手持ち無沙汰」と表現できます。
「無沙汰」という語は本来「便りをしない」「音信不通」という意味を持ちますが、「手持ち無沙汰」の場合はそこから転じて「何もしていない」「手が空いている」というニュアンスになっています。
そのため、この表現は単に「暇」というよりも、
- 手が遊んでしまっている
- なんとなく落ち着かない
- することがなく退屈している
といった感覚を含んでいる点が特徴です。
「手持ち無沙汰」の例文・使い方
「手持ち無沙汰」は、日常生活でもビジネスでも幅広く使える慣用句です。
単に「暇」というよりも、「やることがなく退屈している」「落ち着かない」というニュアンスを表すときに使われます。
日常生活での例文
ビジネスシーンでの例文
使い方のポイント
「暇」と同じ意味で使うこともありますが、ニュアンスとしては「何をしてよいかわからず所在なげにしている」イメージがあります。
主に人の様子を形容する言葉として用いられます。
「手持ち無沙汰だ」「手持ち無沙汰に〜する」といった形で使われます。
フォーマルでもカジュアルでも使えますが、少し文語的・書き言葉的な響きがあるため、日常会話では「暇で〜」と表現する場面の方が多いです。
「手持ち無沙汰」の同義語・言い換えや類義語は?
「手持ち無沙汰」と似た意味を持つ表現はいくつもあります。
それぞれ微妙なニュアンスが異なるため、状況に応じて使い分けると表現の幅が広がります。
言葉 | 意味・ニュアンス | 例文 |
暇(ひま) | することがなく、時間を持て余していること。最も一般的で日常的な表現です。「手持ち無沙汰」と違い、単に予定や用事がない状態を指す場合にも使えます。 | 今日は予定がなくて一日中暇だった。 |
退屈(たいくつ) | 面白みがなくつまらないと感じること。「手持ち無沙汰」と同じようにやることがなく落ち着かない場面で使えますが、「飽きている」「つまらない」という心理的な側面が強い言葉です。 | 授業が単調で退屈してしまった。 |
所在ない(しょざいない) | 何をしてよいか分からず、落ち着かない様子。「手持ち無沙汰」と特に近い意味を持つ表現で、どこか居心地の悪さを含みます。 | 初めての集まりで知り合いもおらず、所在ない気持ちになった。 |
間が持てない(まがもてない) | 時間を埋める話題や行動がなく、沈黙や空気が気まずいときに使う表現。「手持ち無沙汰」が「することがなく退屈している」状態を指すのに対し、「間が持てない」は場の空気や時間のつなぎに困っているニュアンスが強いです。 | 相手が無口で、会話が続かず間が持てなかった。 |
手遊び(てすさび) | 暇をもてあまして何気なく手で物事をすること。「手持ち無沙汰」の状態から派生して行動に移った場面でよく使われます。 | 退屈だったので、鉛筆で絵を描く手遊びをしていた。 |
暇を持て余す(ひまをもてあます) | やることがなく、時間を持て余して退屈している様子。「手持ち無沙汰」とほぼ同じ意味で使えますが、「時間が長く感じる」「どう過ごせばいいか困っている」というニュアンスが強調されます。 | 連休最終日は予定がなく、暇を持て余していた。 |
無聊をかこつ(ぶりょうをかこつ) | 「無聊」とは「退屈・つまらなさ」、「かこつ」は「不満を訴える」という意味。つまり「退屈さを嘆く」「やることがなくつまらないと感じる」ことを表す文語的表現です。現代では文章や文学的な文脈でよく使われます。 | 一人きりで長い夜を過ごし、無聊をかこった。 |
ぶらぶらしている | 特に目的もなく歩いたり、だらだら時間を過ごしたりすること。「手持ち無沙汰」はその場にいて落ち着かない様子を指すことが多いのに対し、「ぶらぶらしている」は行動を伴って表す点で違いがあります。 | 午後は特に予定もなく、街をぶらぶらして過ごした。 |
「手持ち無沙汰」は「暇」や「退屈」と近い意味を持ちながらも、「手が遊んで落ち着かない」ニュアンスを含む表現です。
同義語や言い換え表現を理解しておくことで、場面や文体に応じて適切に使い分けることができます。
「手持ち無沙汰」の由来・語源は?
「手持ち無沙汰(てもちぶさた)」という言葉は、文字通り「手持ち」と「無沙汰」という二つの要素から成り立っています。
語源を分解して見ていくと、そのニュアンスがより理解しやすくなります。
「手持ち」の意味
「手持ち」とは、手元に持っているもの、あるいは手元に備わっている状況を指します。
現代では「手持ちのお金が少ない」といった使い方をすることもありますが、ここでは「手元にやることがあるかどうか」という意味合いで使われています。
「無沙汰」の意味
「沙汰(さた)」は本来、「処置」「取り計らい」「知らせ」「行い」などを意味する言葉です。
たとえば「御沙汰(ごさた)」「音沙汰(おとさた)がない」という形で日常的に用いられます。
「無沙汰」とは「沙汰がない=行うことがない」「音信が途絶えている」といった意味になります。
この二つを合わせた「手持ち無沙汰」は、直訳すると「手元にすることがない」「手を持て余す状態」ということになります。
単なる「暇」というよりも、やることがなく所在なさを感じたり、どう振る舞えばよいか分からず落ち着かない様子を表すのが特徴です。
「手持ち無沙汰」に関するQ&A
- 「手持ち無沙汰」の対義語は?
- 「手持ち無沙汰」と「暇」の違いは?
- 「手持ち無沙汰」はポジティブ?ネガティブ?
- 「手持ち無沙汰」を英語で言うと?
「手持ち無沙汰」に関するよくある疑問は上記の通りです。
ここからそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。
「手持ち無沙汰」の対義語は?
「手持ち無沙汰(てもちぶさた)」は、やることがなく手を持て余して退屈している様子を表す言葉です。
その反対の意味、すなわち やることが多く忙しくしている状態や、生活が満たされている様子 を指す言葉が対義語として考えられます。
対義語 | 意味・ニュアンス | 例文 |
忙しい・多忙 | 最もシンプルな対義語は「忙しい」や「多忙」です。やるべきことが多く、退屈するどころか時間が足りない状態を表します。 | 彼は手持ち無沙汰とは正反対で、毎日仕事に追われて忙しい。 |
充実している | 「暇で退屈」という手持ち無沙汰に対して、やることがあり生活が満たされている様子を表す「充実している」も反対の意味として使えます。必ずしも忙しいわけではなく、ポジティブな対比表現です。 | 趣味や勉強で日々が充実しており、手持ち無沙汰になることはない。 |
猫の手も借りたい | 「猫の手も借りたい」は、あまりにも忙しくて、役に立たない猫の手でも借りたいほどだ、という意味の慣用句です。人手不足の極端な忙しさを生き生きと表現します。 | 年末は注文が殺到し、猫の手も借りたいほどだった。 |
てんてこ舞い | 「てんてこ舞い」は、忙しさのあまり慌ただしく動き回っている様子を表す慣用句です。日常会話でもよく用いられ、臨場感のある表現です。 | 来客が多すぎて、店員たちはてんてこ舞いだった。 |
以上の言葉・慣用句は、暇を持て余す「手持ち無沙汰」とは正反対に、やることがありすぎて困る/充実して退屈しない 状態を表す言葉といえるでしょう。
「手持ち無沙汰」と「暇」の違いは?
一見すると「手持ち無沙汰」と「暇」は似たような意味に思えますが、実はニュアンスに違いがあります。
「暇」とは、やるべきことがなく自由に時間がある状態を表す一般的な言葉です。
ポジティブにもネガティブにも使える幅広い表現で、休養や娯楽に使う余裕のある時間を意味する場合もあります。
例えば、
- 今日は仕事が休みで暇だ。
- 暇なときに読書を楽しむ。
一方「手持ち無沙汰」とは、「暇」と同じくやることがない状態を指しますが、そこには 退屈さ・所在なさ・落ち着かなさ が含まれます。
単に時間が空いているだけでなく、「何をしていいかわからない」「周囲に合わせられず気まずい」といったニュアンスが加わるのが特徴です。
例えば、
- 友人が忙しそうに準備している中、自分だけ手持ち無沙汰で立っていた。
以上の通り、「暇」は中立的で広く使える言葉ですが、「手持ち無沙汰」は「何もすることがなくて気まずい」「手を持て余して落ち着かない」といった 心理的な不快感 を含む点で違いがあります。
したがって、状況に応じて言い分けることが大切です。
「手持ち無沙汰」はポジティブ?ネガティブ?
「手持ち無沙汰」には、単なる暇ではなく 退屈さ・所在なさ・落ち着かない気持ち が含まれています。
そのため、基本的にはネガティブな表現として使われます。
- 「周囲が忙しいのに自分だけ手持ち無沙汰」
- 「やることがなくて気まずい」
こうした状況は、気楽というよりも「困った感じ」を伴うのが特徴です。
以上の通り、「暇」は「のんびりできる」「休養できる」といったポジティブな意味で使える場合がありますが、「手持ち無沙汰」はそうしたニュアンスはほとんどありません。
むしろ「時間を持て余して困る」「間がもたない」といった消極的な意味合いで使われます。
「手持ち無沙汰」を英語で言うと?
「手持ち無沙汰(てもちぶさた)」は、日本語特有のニュアンスを持つ言葉で、直訳すると「having nothing to do with one’s hands(手でできることがない)」ですが、英語ではそのままの表現は存在しません。
状況に応じていくつかの表現を使い分けます。
英語表現 | 意味・ニュアンス | 例文 |
bored(退屈している) | もっとも一般的な言い換えは bored です。やることがなく退屈している様子をシンプルに表せます。 | I was bored and didn’t know what to do. (手持ち無沙汰で、何をしていいかわからなかった。) |
idle(暇を持て余している) | 「idle」は「怠けている」や「何もしていない」というニュアンスを含む言葉で、「手持ち無沙汰」の雰囲気に近い表現です。 | He was standing idle with nothing to do. (彼は手持ち無沙汰で立っていた。) |
at a loose end(手持ち無沙汰で、所在ない) | イギリス英語でよく使われるイディオムで、「することがなく所在ない」という意味です。「手持ち無沙汰」に最も近い自然な表現のひとつです。 | I felt at a loose end while everyone else was busy. (みんなが忙しい中、自分だけ手持ち無沙汰に感じた。) |
have time on one’s hands(暇を持て余している) | 直訳すると「手の中に時間を持っている」で、「時間が余っている」「暇を持て余している」という表現です。ポジティブにもネガティブにも使えます。 | She has too much time on her hands these days. (彼女は最近、手持ち無沙汰なほど暇を持て余している。) |
「手持ち無沙汰」にぴったり一語で対応する英語はありませんが、状況に応じて以上のような表現が使えます。
特に「at a loose end」はニュアンスが近いため覚えておくと便利です。
まとめ:「手持ち無沙汰」の意味・例文を理解しよう
「手持ち無沙汰」という言葉は、ただの「暇」とは異なり、やることがなくて落ち着かない・所在なさを感じる状態を表す、日本語ならではの表現です。
日常生活や仕事の場面でふとした瞬間に使うことで、感情や状況を繊細に伝えることができます。
また、この言葉を理解すると、反対語や類似表現との対比も見えてきます。
忙しくて手が回らない状態を表す「猫の手も借りたい」や「てんてこ舞い」と比べることで、文章や会話のニュアンスに豊かさを加えることができます。
言葉の持つ細やかなニュアンスを意識することで、読み手や聞き手に「その場の気まずさ」「退屈さ」を自然に伝えられるようになります。
「手持ち無沙汰」を上手に使いこなせれば、文章や会話の表現力をより一段深めることができるでしょう。