慣用句「溜飲を下げる」の意味は?例文・使い方・類義語・由来を解説!

「ずっと我慢していたことをようやく言い返せてスッキリした」「長年のライバルに勝って気が済んだ」──そんな場面で使われるのが「溜飲を下げる」という表現です。

本記事では、慣用句「溜飲を下げる」の意味や使い方、類義語、由来まで詳しく解説します。

日常会話や文章で正しく使えるようになりたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

慣用句「溜飲を下げる」の読み方と意味は?

意味:不平や不満が解消され、胸がすく。出典:デイリーコンサイス国語辞典

慣用句の「溜飲を下げる」は「りゅういんをさげる」と読みます。

この表現は少し古風で、現代の会話ではあまり耳にしないこともありますが、新聞や小説、評論文などでは今でも頻繁に使われています。

意味としては、「長い間抱えていた怒りや悔しさ、不満といった感情が何かのきっかけで解消し、気分がスッキリすること」です。

つまり、感情のカタルシス(心の浄化)が得られるような状態を表す言い回しでもあります。

たとえば、自分を見下していた相手に勝利したときや、理不尽な仕打ちをしてきた人が失敗したのを見たときなどに使われることがあります。

「溜飲(りゅういん)」は、元は漢方医学の用語で、胃にたまった酸が逆流して胸やけのような状態になることを意味します。

そこから転じて、怒りや悔しさなどの“つかえ”を表すようになり、「溜飲を下げる」はそれが解消される=気が晴れる、という意味になりました。

なお、「溜飲を晴らす」という言い方をする人もいますが、これは正確な使い方ではありません。

「晴らす」は「憂さ晴らし」や「うっぷん晴らし」などで使われる動詞であり、「溜飲を下げる」が慣用句として正しい表現です。

「溜飲を下げる」の例文・使い方

「溜飲を下げる」は、長く抱えていた怒りや不満が、ある出来事をきっかけに解消されて、気持ちがすっきりする場面で使います。

主に過去のわだかまりや屈辱を晴らしたときなどに使われる表現です。

以下、いくつか例文をご紹介します。

宿敵との再戦に勝ち、ようやく溜飲を下げることができた。
昔自分をバカにしていた同級生が謝ってきて、少し溜飲が下がった
上司に理不尽な扱いをされたが、最終的に自分の案が採用されて溜飲を下げた

「使い方のポイント」としては、

  • 「怒り」「悔しさ」「不満」といったネガティブな感情を前提とします。
  • それらが何らかの形で解消されたときに使用します。
  • 主語は「自分」が多く、心理的な回復や満足感を強調する表現です。

一般的には文語・ややフォーマルな表現で、日常会話よりは文章・スピーチ・評論などで使われる傾向があります。

また、ビジネスの場面でも使える表現です。

たとえば職場で自分の意見が無視されたものの、のちにその意見が正しかったと認められたときなどに、「溜飲を晴らすような出来事だった」と言うことができます。

「使用上の注意点」としては、

  • 喜びや単純な成功の表現ではありません。
  • 「晴らす」べき怒りやうっぷんが前提となります。

単に嬉しい・感動したという場面では不自然になるため注意が必要です。

「溜飲を下げる」の同義語・言い換えや類義語は?

この章では「溜飲を下げる」と意味が似ており、言い換えとして使える表現を紹介します。

同義語・類義語意味例文
ストレスを解消するたまっていた精神的な負担や緊張を取り除くこと。カラオケで思いきり歌って、ストレスを解消した
鬱憤(うっぷん)を晴らす心の中にたまった怒りや不満を発散して、気持ちをすっきりさせること。試合で圧勝して、今までの鬱憤を晴らすことができた。
気分がすっきりするもやもやしていた気持ちが晴れて、心地よく感じること。言いたいことを全部言えて、気分がすっきりした
わだかまりが消える人との間にあった誤解や不信感がなくなること。じっくり話し合ったことで、ようやくわだかまりが消えた
清々しい(すがすがしい)気持ちが晴れやかで、さっぱりと感じる様子。試合後の彼の表情は、なんとも清々しかった
憂さ晴らしをする不快な気持ちや不満を、別のことで発散すること。カラオケに行って思いきり歌い、憂さ晴らしをした
安堵(あんど)する不安や緊張がなくなって、ほっと安心すること。試験の合格通知を見て、ようやく安堵した
胸がすっとする心につかえていたものがとれて、気持ちが軽くなること。言いたいことを正直に伝えたら、胸がすっとした
気が晴れるもやもやした気持ちがなくなり、さっぱりすること。友達に悩みを打ち明けたら、気が晴れた
腹の虫が収まる怒りや不満がおさまり、気持ちが落ち着くこと。彼に謝ってもらって、ようやく腹の虫が収まった

これらの表現は、状況や文体に応じて「溜飲を下げる」の言い換えとして使うことができます。

ややカジュアルな言い方も多いため、会話やSNSなどでは特に使いやすいでしょう。

「溜飲を下げる」の由来・語源は?

この州では語源「溜飲を下げる」の由来・語源についてご紹介します。

この言葉の「溜飲(りゅういん)」とは、「飲み込んだ飲み物が胃にたまること」を指します。

もともとは、胃の中に飲み物がたまっているとき、飲み込んだ液体が喉元まで逆流して苦しく感じることを「溜飲が上がる」と言いました。

つまり、胃の中の液体が上にたまるイメージです。

この状態は、胸がつかえるような苦しい気持ちに例えられ、不満や怒りが心の中に溜まっている状態を指すようになりました。

そこから、逆に「溜飲を下げる」とは、胃の中の液体が下に下がるように、心のもやもやや不満がなくなり、スッキリとするという意味になりました。

この言葉の歴史的背景としては、この言葉は江戸時代の文献などで使われ始めました。

医学的な知識がまだ十分でなかった時代、人々は体の不調や感情を結びつけて表現することが多く、体の状態を心の状態に例える慣用句が数多く生まれました。

「溜飲を下げる」もそうした言葉の一つで、胃の液体が逆流して苦しくなるイメージが「怒りや不満が溜まる」ことと結びつき、反対にそれが落ち着くことを「溜飲を下げる」と表現するようになりました。

 

このように、「溜飲を下げる」は体の中の状態から生まれた言葉で、今も日常会話でよく使われる表現です。

感情が晴れるときにぴったりの言葉ですね。

「溜飲を下げる」に関するQ&A

  • 「溜飲を下げる」の対義語は?
  • 「溜飲を下げる」を英語・中国語で言うと?

「溜飲を下げる 」に関するよくある疑問は上記の通りです。

ここからそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。

「溜飲を下げる」の対義語は?

「溜飲を下げる(りゅういんをさげる)」とは、胸のつかえが取れて気分がすっきりすることを意味する慣用句です。

長年のうっぷんや怒りが解消されたときなどに使われる表現です。

では、その反対の意味、つまり「怒りや不満がたまる」「納得できずモヤモヤする」ような状態を表す言葉にはどのようなものがあるのでしょうか?

この章では、「溜飲を下げる」の対義語としてふさわしい慣用表現や関連語を紹介します。

 

「溜飲を下げる」の対義語意味例文
腹が立つ怒りの感情がこみ上げること。理不尽な対応に腹が立って、何も言えなかった。
納得がいかない理由や結果に対して心から同意・理解できず、もやもやすること。突然の悪い評価に納得がいかず、ずっとモヤモヤしている。
腹の虫がおさまらない怒りや不満がおさまらず、イライラした気持ちが続くこと。謝ってもらったけれど、どうしても腹の虫がおさまらない
気が晴れない気分が重く、モヤモヤした状態が続くこと。友人と喧嘩して以来、なんだか気が晴れない
不満がたまる納得できないことが続き、心の中に不満が積もっていくこと。仕事での評価に対して不満がたまり、やる気をなくしてしまった。
モヤモヤするはっきりしない感情や不安が心に残り、すっきりしない状態。ちゃんと話せなかったことが心に引っかかって、モヤモヤする
胸がつかえる言いたいことが言えなかったり、不安・後悔などで気持ちが重苦しくなること。誤解されたままで何も言えず、ずっと胸がつかえている
気が収まらない怒りや不満がおさまらず、心が落ち着かないこと。理不尽な仕打ちを受けて、どうにも気が収まらない
腹の虫がおさまらない怒りや不快な感情が抑えられず、気分が悪いままでいること。あんな言い方をされては、腹の虫がおさまらないのも無理はない。

日常会話や文章で、心情の変化をより的確に伝えたいときに、これらの言葉を上手に使い分けると、表現の幅が広がります。

「溜飲を下げる」を英語・中国語で言うと?

「溜飲(りゅういん)を下げる」という表現は英語や中国語ではどのように表現するのでしょうか?

今回は、意味が近い英語表現と中国語表現をいくつか紹介し、ニュアンスの違いや使い方の例も合わせて解説します。

英語表現意味例文
get it off one’s chest(胸のつかえを取る)ずっと抱えていた悩みや怒りを打ち明けて、気持ちがすっきりする。心の重荷を下ろしてスッキリする、という点で「溜飲を下げる」に通じます。I finally told him how I felt, and it really got it off my chest.
(ついに自分の気持ちを伝えたら、胸のつかえが取れたよ。)
feel vindicated(正しさが証明されてスッキリする)vindicate とは 〔疑念を〕晴らす、〔無実を〕証明するという意味。自分の主張や行動が正しかったことが証明され、満足感や安心感を得ること。何かに勝って気持ちが晴れる、という「溜飲を下げる」の感覚と一致します。After the investigation, she felt vindicated.
(調査の結果、彼女は自分が正しかったと証明されてスッキリした。)
feel relieved / satisfied(安心する・満足する)モヤモヤや怒りが消えて気持ちが楽になること。 状況が解決してスッキリした気分になる点が類似しています。Seeing justice done made me feel satisfied and relieved.
(正義が果たされて、心から満足し安心した。)

では次に中国語です。

中国語表現意味例文
出了那口恶气(chū le nà kǒu è qì)心の中の怒りや悪い感情を吐き出してスッキリする。 怒りや不満を晴らす表現で、「溜飲を下げる」にぴったり対応します。他终于替我出了那口恶气,真痛快!
(彼がやっと私の代わりに仕返ししてくれて、本当にスッキリした!)
解了心头之恨(jiě le xīn tóu zhī hèn)長年の心の恨みやわだかまりが解けること。長く抱えていた感情が解け、気が晴れるという点で非常に近い表現です。看到他被处分,我终于解了心头之恨
(彼が処分されるのを見て、ようやく心の恨みが晴れた。)
心里舒服了(xīn li shū fu le)心の中がすっきりして、気持ちが楽になる。get it off one’s chest と同様、話すことで気持ちが落ち着くニュアンスがあります。把话说出来,心里舒服多了
(言いたいことを言って、ずいぶん気が楽になった。)

「溜飲を下げる」は日本独自の言い回しではありますが、その意味する「怒りや不満を解消してスッキリする」という感情は、英語や中国語にも似た表現があります。

それぞれの言語の表現を知っておくと、感情の細かなニュアンスまで伝えることができます。

文章や会話の幅も広がるので、ぜひ覚えておきましょう。

まとめ:「溜飲を下げる」の意味・例文を理解しよう

「溜飲を下げる」は、怒りや悔しさといった感情がスッと解消される場面で使われる、非常に感情に寄り添った慣用句です。

漢方に由来する少し古風な表現ですが、現代でも十分通じる言い回しです。

例文や類義語とともに覚えておけば、日常会話や文章表現がより豊かになりますよ。

この記事を通して、「溜飲を下げる」という表現が少しでも身近に感じられたなら幸いです。