「鬼に金棒」という言葉は、元々強力な存在がさらに強化されることを表現することわざです。
日本語のことわざの中でも広く知られ、様々な場面で使われています。
ことわざ「鬼に金棒」の意味や使い方について深く理解することで、日本語をより豊かに表現できるようになります。
この記事では、「鬼に金棒」の意味や例文・使い方について詳しく解説し、類義語や語源にも触れていきます。
「鬼に金棒」の意味と正しい読み方
意味:「強い者にさらに強さが加わること」 出典:デイリーコンサイス国語辞典
「鬼に金棒」は、日本の古くから伝わることわざで、その意味は「元々強い者がさらに力を得て、より強くなること」を表します。
「鬼に金棒」の「鬼」は、頭に角、口に鋭い牙、手に棍棒(こんぼう)を握る想像上の怪物を指します。
日本には鬼が出てくる昔話が沢山ありますが、桃太郎が退治した鬼も、一寸法師が戦った鬼も、頑丈で強そうです。
「金棒」は、「鉄棒(かなぼう)」とも書きます。
正式名称は「金砕棒(かなさいぼう)」で、南北朝時代に日本で作られた金属製の武器の一種です。
一般的には鬼が持つバット型のものが知られています。
素手でも元々強い鬼が、更に武器の金棒を持ったら、正に無双状態、誰も鬼には敵いませんよね。
「鬼に金棒」は、強さや能力が増す様子を描写する際に用いられることが多いです。
また、このことわざは、力の強さだけでなく、財力や知力など、幅広い能力が増すことを指すこともあります。
「鬼に金棒」の使い方
「鬼に金棒」は、元々強い者がさらに力を得て、より強くなることを表す日本のことわざです。
この言葉は、身体的な強さだけでなく、知識や能力などを指すこともあり、ビジネスシーンでも活用できます。
優秀さを称える際に使える
「鬼に金棒」は、誰かの秀でた一面を褒める際に利用できます。
称える対象は人だけではなく、組織やものを指しても使えるため、さまざまなシーンで応用できます。
例えば、優秀な同僚や敵なしのスポーツチーム、最新設備を搭載した車や機械を形容することもできます。
「鬼に金棒」を使う際の注意点
「鬼に金棒」を使う際には、以下の2つの点に注意が必要です。
先ず「鬼に金棒」は、金棒を持てば誰でも強くなれる訳ではありません。
元から力が強い「鬼」だからこそ、重い金棒を使いこなせるのです。
日常生活で使う場合も、高い能力(スキル、資金力)などがあることが前提になります。
そして2つ目には、相応しい「武器」が必要です。
「鬼に金棒」には、「金棒」が「鬼」にとって相応しい道具なので、強い鬼がさらに強くなります。
例えば、強い球団にプロサッカー選手が移籍しても、より強くはなりませんし、有名パティシエに出刃包丁を持たせても、扱いづらくかえって邪魔になりますよね。
以上2つに注意して「鬼に金棒」ということわざを使うようにしてください。
「鬼に金棒」の例文
以下に、「鬼に金棒」を使った例文をいくつか紹介します。
「彼女は元々美人だったが、最近ダイエットに成功して、まさに『鬼に金棒』の状態だ。」
加えて、小学生向けの例文も以下に紹介します。
「鬼に金棒」の類義語
「鬼に金棒」と同じ意味を持つ類義語のことわざは、以下のように多くあります。
弁慶に薙刀 (べんけいになぎなた) | 武蔵坊弁慶が薙刀を得ることで、さらに強くなる様子を表す表現です。 竜に翼を得たる如し: 強大な竜が翼を得ることで、さらに力が増す様子を指す表現です。 |
虎に翼 | 中国の「韓非子」に由来し、強い虎に翼が生えることで、さらに強くなることを意味する表現です。ただし、ネガティブな意味で使われることもあるため、使用する際には注意が必要です。 |
駆け馬に鞭 | すでに速い馬に鞭を打つことで、さらに速くなる様子を表す表現です。 |
鬼に鉄撮棒(かなさいぼう) | 「鬼に金棒」と同様に、強い者がさらに力を得ることを意味します。 |
鬼に金梃(かなてこ) | これも「鬼に金棒」と同じく、強い者がさらに力を得ることを表す表現です。 |
鬼に鉄杖(てつじょう) | 「鬼に金棒」と同じ意味で、強い者がさらに力を得ることを意味します。 |
得手に棒(えてにぼう) | これは「鬼に金棒」と同じく、得意なことにさらに力を加えることを意味します。 |
獅子に鰭(ししにひれ) | 「鬼に金棒」と同じく、強い者がさらに力を得ることを表す表現です。 |
氷に霜 | これは「鬼に金棒」と同じく、既に強いものがさらに強くなることを意味します。 |
走り馬にも鞭 (はしりうまにもむち) | これは「鬼に金棒」と同じく、既に強いものがさらに強くなることを意味します。 |
飛脚に三里の灸 (ひきゃくにさんりのきゅう) | これも「鬼に金棒」と同じく、既に強いものがさらに強くなることを意味します。 |
これらのことわざは、日常生活やビジネスシーンなど、さまざまな場面で役立つ教訓を含んでいます。
「鬼に金棒」の語源
室町時代の連歌師である宗長が詠んだ「もののふの矢橋の船は速けれど鬼に金棒瀬田の長橋」という歌が、「鬼に金棒」の始まりとされています。
「もののふ」とは武士のこと、「矢橋の船」は滋賀県草津市にある琵琶湖の矢橋港から大津市の石場港までを渡る船のことを言い、「瀬田の長橋」とは日本三大名橋の一つである「瀬田の唐橋」のことです。
この歌は、当時の武士が琵琶湖を横断する際の安全性を考慮して、矢橋の船よりも瀬田の長橋を渡ることを促すメッセージを含んでいます。
京都に行くには矢橋の船を使った方が速いが、琵琶湖の突風(比叡おろしと言われる比叡山から吹く強い風)による転覆の危険があるため、安全を重視して回り道を選ぶことが賢明だという意味です。
急いで行動するよりも、安全で確実な方法を選んだ方がかえって早く目的に到達できるという教訓として広く受け入れられ、「鬼に金棒」ということわざとして定着しました。
江戸時代後期には、この教訓がさらに普及し、庶民にも広く浸透しました。
「鬼に金棒」に関するQ&A
「鬼に金棒」に関するよくある疑問には下記のものがあります。
・「鬼に金棒」を対義語は?
・「鬼に金棒」を英語で言うと?
ここからそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。
「鬼に金棒」の対義語は?
「鬼に金棒」の対義語として挙げられるのは、
「餓鬼に苧殻」
です。
この表現は、仏教の教えに由来しています。
「餓鬼」は、六道の一つである餓鬼道に落ちた亡者を指し、常に飢えと渇きに苦しむ存在とされています。
そのため、力や影響力が乏しく、頼りにならない存在と見なされます。
一方、「苧殻」は、麻の茎の皮を指します。
これは非常に弱く、脆弱なものであり、武器として使うには適していません。
餓鬼が苧殻を振り回しても、それによる脅威はないという意味合いが含まれています。
つまり、「餓鬼に苧殻」は、「全くもって頼りにならないこと」という意味で使われます。
この言葉は、「鬼に金棒」とは逆に、強さや頼りになる存在としての能力が乏しい状況を表しています。
「鬼に金棒」を英語で言うと?
「鬼に金棒」を英語に直訳すると”The strength of Samson”となりますが、この表現では元の意味を完全には伝えられません。
そこで、「鬼に金棒」に近い意味を持つ英語表現をいくつか紹介します。
直訳すると「ムーア人が多ければ多いほど、より良い勝利がある」となります。
ムーア人はローマ時代に最強の戦士とされていたため、「強い者が沢山いれば、勝利しやすい」という意味を表現しています。
中国のことわざ「如虎添翼(虎に翼を付けたかのようだ)」や「為虎傅翼(虎のために翼を付ける)」に由来し、「虎に翼」という日本のことわざと同じく、「強い者がますます強くなる(最強になる)」ことを表しています。
直訳すると「強い人をさらに強くする」となり、「鬼に金棒」の意味を直接的に表現しています。