思いを馳せるの例文とは?意味・使い方・類語・対義語・英語を解説!

「思いを馳せる」――この言葉に、あなたはどんな情景を思い浮かべますか?

遠くを見つめる横顔、過ぎた日々への郷愁、あるいは未来への希望かもしれません。

美しく奥深いこの慣用句は、私たちの感情や思考の広がりを豊かに描写します。

しかし、「使い方が難しい」「どんな時に使うの?」と感じる方もいるでしょう。

この記事では、「思いを馳せる」の意味から、豊富な例文、似た言葉との違い、語源、そしてビジネスや日常で役立つ情報まで徹底解説!

この記事を読めば、あなたは「思いを馳せる」を自信を持って使いこなし、コミュニケーションをより豊かに彩れるはずです。

さあ、その魅力に触れてみませんか?

慣用句「思いを馳せる」の読み・意味は?

(思いを)馳せる:<下>走らせる。/(ア)名を広める。(イ)遠くに至らせる。▼思いを~  出典:デイリーコンサイス国語辞典

「思いを馳せる」は、「おもいをはせる」と読みます。

この言葉が持つ核心的な意味は、「心の中で、遠く離れた場所や人、あるいは過去や未来の事柄について深く考える、想像する、想いを巡らす」ことです。

単に「考える」とは異なり、「思いを馳せる」には、対象への深い感情や強い関心、郷愁、あるいは未来への期待といった情緒的なニュアンスが込められています。

物理的にその場にいなくとも、心だけは遠くへ旅立ち、対象に寄り添うような情景を表すのが特徴です。

この慣用句は、以下のような状況で用いられることが多いです。

遠く離れた場所や人に対して:

  • 故郷の家族や友人を案じる気持ち。
  • 異国の文化や人々の暮らしに想像を巡らせる心。

過ぎ去った過去の出来事に対して:

  • 楽しかった思い出や、過ぎし日の青春を懐かしむ感情。
  • 歴史上の人物や出来事に敬意を払う心。

まだ見ぬ未来の展望に対して:

  • 将来の夢や目標、理想の姿を描く希望。
  • 計画の成功や、プロジェクトの達成を願う心。

このように、「思いを馳せる」は、時間や空間を超えて心を飛ばし、そこに意識を向ける行為全般を指し、その背後には常に何らかの感情が伴います。

「思いを馳せる」の例文・使い方

「思いを馳せる」は、感情が伴う想像や思考を表すため、様々な状況で豊かに使われます。

ここでは、具体的な例文を通して、その使い方を深く理解していきましょう。

1. 人や故郷、大切なものへ想いを馳せる例文

遠く離れた人や場所、あるいは心の中で大切な存在について考える際に使います。

故郷に対して:

遠く離れた故郷の景色に思いを馳せる
故郷で元気に暮らす両親に思いを馳せると、胸が温かくなる。

故人に対して:

お墓参りに行き、亡き祖父に思いを馳せた
卒業アルバムをめくりながら、若くして亡くなった友人に思いを馳せる

恋愛・特定の人に対して:

海外に留学中の彼に、毎晩思いを馳せている
密かに憧れている先輩の活躍に思いを馳せると、私も頑張ろうと思えた。

特定の対象に対して:

夕焼け空を眺めながら、遠い宇宙に思いを馳せる
月夜の晩、静かに故郷の家族に思いを馳せた
台風一過の夕凪に、災害に見舞われた遠い地の人々に思いを馳せる

 

2. 過去の出来事や思い出へ想いを馳せる例文

過ぎ去った時間や経験を懐かしんだり、深く考えたりする際に使われます。

楽しかった思い出に:

学生時代に友人たちと過ごした輝かしい日々に思いを馳せた
初めて海外旅行に行った時の感動に思いを馳せると、また行きたくなる。

歴史や文化に:

古いお城を訪れ、戦国の武将たちが生きた時代に思いを馳せる
伝統工芸品を手に取り、先人たちの知恵と技術に思いを馳せた

特定の過去の出来事に:

震災のニュースを見るたび、あの日の悲劇に思いを馳せる
恩師の言葉を思い出し、当時の自分の未熟さに思いを馳せた

 

3. 未来の展望や目標へ想いを馳せる例文

将来のことや、まだ起こっていない出来事について想像したり、期待を抱いたりする際に使われます。

個人の未来に:

いつか実現したい夢の暮らしに思いを馳せると、日々の努力も苦にならない。
数年後の、理想の自分自身の姿に思いを馳せた

プロジェクトや仕事の未来に:

新製品が市場に与える影響、その先の未来に思いを馳せると胸が高鳴る。
プロジェクトの成功を信じ、チーム全員で未来に思いを馳せている。

社会や世界の未来に:

環境問題の解決策を考える中で、持続可能な社会の実現に思いを馳せる

 

以上のように、様々な場面で「思いを馳せる」という言葉は使うことができます。

 

「思いを馳せる」を使う上でのポイント

  • 対象は物理的に「遠い」もの:時間的、空間的に隔たりがあるものに対して使うのが自然です。

「今目の前のことに思いを馳せる」という使い方は通常しません。

  • 助詞は「に」を使う:「~に思いを馳せる」が正しい使い方です。

「~を思い馳せる」は誤りなので注意しましょう。

  • 感情が伴う:単なる情報収集や事実確認ではなく、対象への感情(郷愁、期待、共感、心配など)が伴うニュアンスを含みます。

「思いを馳せる」の同義語・言い換えや類義語、違いは?

「思いを馳せる」には、似たような意味を持つ言葉がいくつか存在します。

しかし、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあり、使い分けを知ることで表現の幅が広がります。

ここでは、同義語・類義語と、特に混同しやすい言葉との違いを解説します。

同義語・類義語意味例文
想いを巡らす (おもいをめぐらす)ある物事について、心の中であれこれ考えを巡らせる。思考の範囲が広いことや、一つの物事に深く、多角的に考えを深めるニュアンスがある。「思いを馳せる」よりも、より具体的な思考プロセスに焦点を当てる場合が多い。 
  • 彼女からの手紙を読みながら、友人の身の上に想いを巡らす
  • この複雑な問題について、夜通し想いを巡らした
想像する (そうぞうする)実際にはないことや、現実にない物事を心の中に思い描く。主に視覚的なイメージや、仮説的な状況を構築する行為を指し、「思いを馳せる」のような感情的な深みは必ずしも含まれない。
  • もし宝くじが当たったら、何をするか想像した
  • 宇宙の果てには何があるのかと想像するのは楽しい。
夢想する (むそうする) 現実離れした夢のようなことをあれこれと思い描く。空想的、非現実的なニュアンスが強く、「思いを馳せる」よりも現実味がない場合に用いられる。 
  • 仕事中に、いつか大金持ちになる日を夢想していた
  • 退屈な会議中、自由に旅をする自分を夢想する
追憶する (ついおくする)過去を振り返り、懐かしく思い出すこと。過去の記憶に浸り、感傷的な感情が伴うことが多い。「思いを馳せる」が過去・現在・未来に及ぶのに対し、追憶は過去に限定される。 
  • 古い写真を見て、楽しかった学生時代を追憶した
  • 故郷の祭りの賑わいを追憶して、胸が締め付けられた。
顧みる (かえりみる)過去の出来事や自分自身の行動を振り返って考える。反省のニュアンスを含むこともあり、客観的・内省的な視点が強い。「思いを馳せる」よりも、具体的な評価や学びを目的とすることが多い。 
  • 自分の言動を顧みて、反省する点が多かった。
  • 会社の創業期を顧みると、多くの困難を乗り越えてきたことがわかる。
郷愁を感じる (きょうしゅうをかんじる) 故郷や昔を懐かしく思う、切ない感情。過去への「思いを馳せる」際に生じる感情の一つであり、具体的な行動ではなく、感情そのものに焦点を当てた表現。 
  • 都会で暮らすと、故郷の温かい人々に郷愁を感じる
  • あの頃の夏休みを思い出すと、いつも郷愁を感じる

「想いを馳せる」との違いは?

思いを馳せる」と「想いを馳せる」は、どちらも同じ「おもいをはせる」と読み、意味も非常に似ていますが、漢字の使い分けによってニュアンスが異なります

「思いを馳せる」:

「思い」は、考えること、思考、記憶、感情全般を広く指します

客観的な思考や理性的な判断、漠然とした心配なども含みます。

例えば、「故郷の発展に思いを馳せる」といった場合、故郷の現状や未来について多角的に考える、といった比較的広範な思考を含みます。

「想いを馳せる」:

「想い」は、特定の対象に対する深い感情、愛着、切ない願いといった、より感情的で個人的な気持ちを表す傾向があります。

例えば、「遠距離恋愛中の恋人に想いを馳せる」といった場合、相手への愛情や会いたい気持ちなど、強い感情に焦点を当てた表現になります。

結論として、どちらを使っても間違いではありませんが、より感情的なニュアンスを強調したい場合は「想い」、思考や記憶、一般的な感情を含めたい場合は「思い」を使うと良いでしょう。

多くの場合は「思いを馳せる」が一般的です。

「思い出す」との違いは?

「思いを馳せる」と「思い出す」は、どちらも過去の事柄に関わりますが、その行為の性質が異なります。

「思い出す」:

過去に経験したことや記憶していたことを、意識的に、またはふとしたきっかけで記憶の中から呼び起こす行為を指します。

忘れていたことを再び認識する、といったニュアンスが強いです。

例:「昨日の会議の内容を思い出す。」「幼い頃の記憶が急に思い出された。」

「思いを馳せる」:

過去の事柄に対して、単に記憶を呼び起こすだけでなく、その情景や状況、感情などを深く想像し、心の中で追体験したり、その背景に考えを巡らせたりする行為を指します。

記憶を辿る以上に、感情的な深掘りや想像が加わります

例:「学生時代の輝かしい日々に思いを馳せる。」(単に思い出すだけでなく、当時の感情や楽しかった情景を心の中で味わう)

「思いを寄せる」との違いは?

「思いを馳せる」と「思いを寄せる」は、どちらも他者への関心を伴いますが、その関心の性質と行動が大きく異なります。

「思いを寄せる」:

特定の相手に対して、恋愛感情や好意を抱くことを指します

多くの場合、直接的な行動を伴う、あるいは伴う可能性のある個人的な感情です。

例:「彼女に思いを寄せているが、なかなか告白できない。」「密かに彼に思いを寄せている。」

「思いを馳せる」:

遠く離れた人や場所、過去や未来の事柄に対して、心の中で深く考え、想像することを指します。

対象への感情は様々ですが、必ずしも恋愛感情とは限りません

また、物理的な行動を伴わない想像や思考が中心です。

例:「故郷の友人に思いを馳せる。」(心配や懐かしさなど)

「亡き父に思いを馳せる。」(尊敬や感謝、悲しみなど)

つまり、「思いを寄せる」は特定の相手へのロマンチックな好意が中心ですが、「思いを馳せる」は対象への感情がより広範で、想像の行為に重きが置かれます。

「思いを馳せる」の由来・語源と漢字・読み方

「思いを馳せる」という言葉は、その構成要素を分解することで、より深く意味を理解することができます。

ここでは、言葉の成り立ちから、その奥深さを探ります。

「馳せる」の漢字と読み方

「思いを馳せる」の「馳せる」は、「はせる」と読みます。

この「馳」という漢字は、元々「馬が速く走る」という意味合いを持っています。

そこから転じて、「(ある場所へ)急いで行く」「(物事を)速く広める」「(考えや心を)遠くへ届かせる」といった意味で使われるようになりました。

例えば、「名が馳せる(なをはせる)」という言葉は、「評判が遠くまで広まる」という意味で使われますが、これも「馳せる」が持つ「遠くまで届く」というニュアンスから来ています。

「思いを馳せる」の成り立ち

「思いを馳せる」は、「思い」(心で考えること、感情)と「馳せる」(遠くまで届かせる、遠くへ走らせる)が組み合わさってできた慣用句です。

つまり、言葉の通り「自分の心や考え、感情を、まるで馬を走らせるように遠い場所や時間へ向かわせる」という情景を描写しています。

この言葉が持つ魅力は、単なる「考える」という行為にとどまらず、そこに「遠くへ届ける」という動的なイメージと、それに対する深い感情が込められている点にあります。

物理的な距離や時間の隔たりを超えて、心だけが対象へと向かう、詩的で情緒豊かな表現として古くから使われてきました。

例えば、古代の歌人が故郷や恋人を想って歌を詠む時、その心はまさに「遠くへ馳せられていた」と言えるでしょう。

このように、日本の伝統的な美意識や感情表現とも深く結びついた言葉と言えます。

「思いを馳せる」に関するQ&A

ここでは、「思いを馳せる」という言葉について、よくある疑問や、さらに深く知りたいポイントをQ&A形式で解説していきます。

「思いを馳せる」の対義語は?

「思いを馳せる」は、心や考えが遠くへ向かう状態を表すため、明確な対義語を一つに特定するのは難しいですが、文脈に応じて以下の言葉が考えられます。

対義語意味・ニュアンス例文
心に留めおく(心にとどめておく)心の中にしっかりと記憶し、忘れないでおくこと。あるいは、特定の感情や情報を心の中に秘めておくこと。「思いを馳せる」が心や意識を外(遠く)へ向かわせるのに対し、「心に留めおく」は、その心や意識を内側(自分の中)に留めておく、という点で対照的です。友人の忠告を心に留めおき、今後の行動に活かしたい。
現実を見る(げんじつをみる)空想や想像ではなく、目の前の事実や状況を客観的に直視し、それに基づいて判断すること。「思いを馳せる」が時間的・空間的に隔たりがある対象へ想像力を働かせるのに対し、「現実を見る」は、まさにその対極で、今ここにある事実に焦点を当てる行為です。理想ばかり追い求めるのではなく、そろそろ現実を見るべきだ。
考えない(かんがえない)思考を停止させる、あるいは意識的に考えることを避ける状態。「思いを馳せる」が深く考える、想像するという行為を含むため、その行為そのものを否定する点で対義的です。余計なことは考えないで、目の前の作業に集中しよう。

これらの言葉は、「思いを馳せる」が持つ「遠くへ想像を巡らせる」という行為や「感情的な広がり」と対照的な意味合いを持つと言えるでしょう。

「思いを馳せる」を英語、中国語で言うと?

「思いを馳せる」という表現は、単に何かを考えるだけでなく、「遠い場所や過去の人・出来事に心を向ける」「想像を巡らせる」といった、情感や時間・空間の距離感を伴う深い思考や想像を表す、非常に日本語らしい美しい言葉です。

この繊細なニュアンスを英語や中国語で表現するには、文脈に応じていくつかのフレーズを使い分ける必要があります。

英語での表現

英語では、「思いを馳せる」の持つ方向性(どこに・誰に)と感情・行為(どのように)応じて、以下のような表現がよく使われます。

英語表現意味・ニュアンス例文
muse on/about (a future plan/a distant memory) 詩的で静かな表現。過去の思い出や未来の計画などについて、深く静かに物思いにふける、じっくり考える。She often muses on what her life would be like in a different country. (彼女はしばしば、もし違う国にいたらどんな人生だろうかと思いを馳せる。)
contemplate (a memory/the future) 熟考、考察のニュアンスが強い。過去、未来、またはある概念について、じっくりと深く考える、思いを巡らすAs the sun set, she sat on the beach and contemplated the vastness of the ocean. (日が沈むにつれて、彼女は浜辺に座り、海の広大さに思いを馳せた。)
think of/about (someone/somewhere) 最も一般的で広い表現。物理的に離れた人や場所、過去の出来事などを頭に浮かべる、気に掛ける。Whenever I hear that song, I think of my university days. (その歌を聞くたびに、私は大学時代に思いを馳せる。)
reflect on 過去の出来事や自分の経験を振り返り、その意味や教訓をじっくり考える。反省、熟考のニュアンスも含むI love to reflect on the good old days when I look at these photos. (これらの写真を見ながら、古き良き日々に思いを馳せるのが好きだ。)
long for 切望や憧れの感情を伴い、故郷、過去の時代、会えない人など、遠くにあるものを強く恋しがる、熱烈に願う。 After a decade abroad, he still longs for his hometown. (10年間の海外生活の後も、彼はまだ故郷に思いを馳せている/故郷を強く恋しがっている。)

 

中国語での表現

中国語でも、文脈や感情の強さに応じてさまざまな表現があります。

中国語表現意味・ニュアンス例文
思念 (sīniàn) 家族や恋人、故郷など、離れた人や場所を深く思い慕う、恋しいと思う。愛情や恋しさの気持ちが強い。 思念远方的家人。(Wǒ sīniàn yuǎnfāng de jiārén.) (私は遠方の家族に思いを馳せている。)
怀念 (huáiniàn) 

 

過ぎ去った過去の出来事や、亡くなった人などを懐かしく思い、しのぶ。「懐かしむ」に近い。 看到这棵树,我不禁怀念起我的童年。(Kàndào zhè kē shù, wǒ bùjīn huáiniàn qǐ wǒ de tóngnián.) (この木を見て、私は思わず自分の幼少時代に思いを馳せる。)
遐想 (xiáxiăng) 遠い過去や未来、または現実離れしたことに空想や想像を巡らせる。ロマンチックな、または非現実的なイメージを伴うことが多い。 他一个人静静地坐在窗边,沉浸在遐想中。(Tā yīgè rén jìngjìng de zuò zài chuāngbiān, chénjìn zài xiáxiăng zhōng.) (彼は一人静かに窓際に座り、思いを馳せる/空想に耽っている。)
牵挂 (qiānguà) 離れている人や物事が心配で気にかかる。心に引っかかる。「案じる」というニュアンスも含む。 妈妈经常牵挂在外地工作的儿子。(Māma jīngcháng qiānguà zài wàidì gōngzuò de érzi.) (母はよく遠方で働く息子のことを思い馳せる/案じている。)

このように、「思いを馳せる」という日本語の一言は、外国語ではその感情の「温度」(強い感情、冷静な思考)や「方向」(過去、未来)を捉え、適切な単語やフレーズに分解して表現することで、より正確に伝えることができます。

まとめ:「思いを馳せる」の意味・例文を理解しよう

「思いを馳せる」という日本語の美しい表現は、単に何かを考えるという行為を超越しています。

それは、時間や空間を超えて心や意識を遠くへ向かわせるという、情感を伴った深い行為を表します。

この言葉には、故郷への懐かしさ、未来への憧れ、遠い誰かへの静かな想いなど、温かい感情が込められています。

日本語の文章や会話でこの表現を使うときは、単に「考える」と言うよりも、より深く、そして詩的な感情を伝えることができるでしょう。