厚顔無恥の意味とは?使い方・例文・由来・類義語を分かりやすく解説!

ことわざで「厚顔無恥(こうがんむち)」という言葉を聞いたことはありますか?

これは、自分の恥ずかしい行いや間違いをまったく気にせず、平気で図々しく振る舞う人を表す表現です。

普段の会話やニュース、ドラマなどでも使われることがあり、その意味や使い方を知っておくと、相手の態度や行動を的確に理解する助けになります。

この記事では、「厚顔無恥」の意味はもちろん、使い方のポイントや例文、語源・由来、類義語、対義語、英語表現なども分かりやすく解説していきます。

ことわざ 「厚顔無恥」とは?読み方と意味を解説

意味:あつかましく恥知らずな・こと(さま)。出典:スーパー大辞林3.0

「厚顔無恥」(こうがんむち)は、「厚顔」と「無恥」という二つの言葉が組み合わさった四字熟語です。

まず、「厚顔」とは「厚かましいこと」「図々しいこと」を意味し、「無恥」は「恥を知らないこと」「恥知らず」「恥じらいがないこと」を指します。

つまり、「厚顔無恥」とは、恥を感じるべき場面でも恥じらいをまったく持たず、平気で図々しくふるまうことを表します

この言葉は、他人の批判や非難を気にせず、恥ずかしさを感じない態度や行動を指すときによく使われます。

例えば、失敗しても謝らずに同じことを繰り返す人や、自分の間違いを認めずに厚かましく振る舞う人に対して「厚顔無恥だ」と言うことがあります。

「厚顔無恥」の使い方と例文

「厚顔無恥」は、主に人の態度や性格、行動を非難・批判する際に使われる表現です。

フォーマルな文章や日常会話、報道、評論など幅広い場面で用いられますが、相手に対して強い否定的な印象を与える言葉であるため、使用には注意が必要です。

■ 例文

他人の成果を自分のもののように語るなんて、まさに厚顔無恥だ。
あれほどの不正をしておきながら平然と出社するなんて、彼の厚顔無恥ぶりにはあきれる。
自分が悪いのに逆ギレするとは、厚顔無恥も甚だしい。
人の忠告を無視して好き勝手に振る舞う彼女は、まさに厚顔無恥な人物といえるだろう。

■ 使い方のポイント

  • 対象は人物に限られることが多く、その人の行動や性格を批判的に表すときに使う
  • 他人のずうずうしさや開き直った態度に対して使う
  • 書き言葉でも話し言葉でも使えるが、ややかたい表現

「厚顔無恥」の類義語・言い換え表現とは?

「厚顔無恥」は、「恥を知らずに図々しく振る舞う様子」を表す強い表現です。

この章では、この意味に近い言葉や、少しやわらかく言い換えたい場合に使える類義語・関連表現をご紹介します。

 

類義語・言い換え表現意味・特徴例文
鉄面皮(てつめんぴ) 面(つら)の皮がまるで鉄でできているように図々しく、恥知らずな態度を意味し、「厚顔無恥」とほぼ同義。やや文語的。 どれだけ批判されても平然としている彼は、まさに鉄面皮と言える。
図々しい(ずうずうしい) 他人への遠慮や恥じらいがなく、平然と振る舞うこと。「厚顔無恥」の日常的な言い換え。 人の話に割り込んでくるなんて、図々しいにもほどがある。
厚かましい(あつかましい)恥を知らずに出しゃばること。「厚顔無恥」との意味の違いはほぼないが、より口語的。 あんなに遅れてきたのに謝りもしないなんて、厚かましい
破廉恥(はれんち) 恥を恥とも思わない行動・態度。性的・道徳的な文脈で使われやすいが、恥知らずという点で一致。 公共の場で大声で卑猥な話をするなんて、破廉恥だ。
いけしゃあしゃあ 平然と嘘や言い訳をする様子。羞恥心のなさ、厚かましさが「厚顔無恥」と共通する俗語的表現。 遅刻の言い訳をいけしゃあしゃあと語る彼に、誰もが呆れていた。
いけ図々しい(いけずうずうしい)非常に図々しいことを強調する表現。「厚顔無恥」のくだけた口語的言い換え。 他人の弁当を勝手に食べるなんて、いけ図々しい行動だ。

 

やや意味は異なるが、関連性のある表現意味例文
傍若無人(ぼうじゃくぶじん) 他人を無視し、礼儀を欠いた自分勝手な態度。恥を感じないとは限らないが、厚顔な振る舞いと関連。 彼は会議中に人の意見を遮ってばかりで、まるで傍若無人だった。
我田引水(がでんいんすい) 自分の田にだけ水を引く身勝手さから転じて、自分に都合よく物事を解釈・利用すること。恥知らずではないが、自分本位という点で通じる。このような言い方をすると我田引水に聞こえて恐縮ですが、私の考え方を説明させていただきます。
勝手気儘(かってきまま)他人に配慮せず自分の思うままに振る舞うこと。恥じる気持ちの有無は問わないが、図々しさに通じる。 みんなが協力してる中で一人だけ勝手気儘な態度は困る。
得手勝手(えてかって) 自分の得意なこと、都合のよいことだけを優先すること。他人の迷惑を顧みない態度が共通点。 作業の一部だけして帰るなんて、得手勝手すぎる。
心臓に毛が生えている (しんぞうにけがはえている)非常に図太く、神経が太い人を形容する言い回し。必ずしも否定的ではないが、羞恥心のなさ=厚顔さとのつながりがある。 初対面の相手にもズケズケと意見を言えるなんて、心臓に毛が生えているよ。
心臓が強い(しんぞうがつよい)緊張や恥に強く、動じない態度をとる人を指す。必ずしも否定的ではないが、厚顔さと重なる面がある。 大勢の前でも堂々と話せるなんて、心臓が強いね。

「厚顔無恥」に近い言葉は多数ありますが、それぞれ微妙なニュアンスや使用シーンが異なります。

「鉄面皮」や「図々しい」「いけしゃあしゃあ」などは、特に「恥を知らない」点で類似性が高く、「傍若無人」や「我田引水」は他人への無神経さ、自分勝手さの面でつながりがあります。

使い分けることで、表現の幅が広がります。

「厚顔無恥」の由来・語源をわかりやすく紹介

「厚顔無恥(こうがんむち)」という言葉は、「図々しい人」「恥を知らない人」などを表す少し強めの批判表現として使われますが、その成り立ちを知ることで、言葉のニュアンスをより深く理解することができます。

■ 言葉の構成:四字熟語の意味を分解してみよう

「厚顔無恥」は、次の4つの漢字から成る四字熟語です。

それぞれの漢字の意味は、

厚:「あつい」という意味ですが、ここでは「ずうずうしい」「恥知らず」という否定的な意味で使われています。

顔: 文字通り「顔」。つまり「人前に出る態度」や「表情・厚かましさ」を象徴しています。

無: 「ない」という否定を表します。

恥 :「はじ」。恥じる気持ち。道徳的・社会的な良心や遠慮を表します。

つまり「厚顔無恥」とは、「顔(面)の皮が厚く、恥を知らない、恥を感じる心がないこと」を表現しており、「恥を知らずに平気で図々しい行動をとるさま」を意味するようになったのです。

■中国最古の詩集『詩経』に由来する言葉

「厚顔無恥」という言葉の起源は、中国最古の詩集『詩経』にあります。

『詩経』は紀元前11世紀から紀元前6世紀頃にかけて編纂された詩集で、古代中国の詩歌を集めたものです。

その中の「小雅(しょうが)」という篇に、以下のような一節があります。

「巧言如簧、顔之厚矣」(読み:こうげん こうのごとく、がんのあつきや)

この句は、「巧みな言葉が笛の音のように流暢に出てくるが、その顔の厚さには驚かされる」という意味で、言葉巧みに外面を取り繕い、内面の恥を隠す様子を表現しています。

 

「厚顔無恥」は、「厚顔(あつかましいこと)」と「無恥(恥を知らないこと)」という二つの語を組み合わせた四字熟語です。

これらの語は、中国の古典文学や詩文の中で使用されていた表現であり、日本には漢文の学習や仏教の伝来を通じて伝わりました。

特に、中国南北朝時代の文学作品『文選(もんぜん)』の中の「北山移文(ほくざんいぶん)」という詩文にも以下のような表現が見られます。

「豈可使芳杜厚顏、薜荔無恥」(読み:あにか ほうとをして こうがんたらしめ、ひれいをして むちたらしめんや)

これは、「香り高い杜若(とじゃく)を厚かましくし、美しい薜荔(へいれい)を恥知らずにすることがあってよいのか」という意味で、「厚顔」や「無恥」という語が用いられています 。

これらの表現が、日本においても漢文学の中で学ばれ、平安時代以降、「厚顔無恥」という四字熟語として定着しました。

 

「厚顔無恥」は単なる悪口ではなく、倫理観や人としてのあり方に関わる深い表現です。

その語源にある「顔の厚さ」と「恥を知らない心」というイメージを思い浮かべると、使うべき場面やその重みも自然と理解しやすくなるでしょう。

「厚顔無恥」に関するよくある質問(Q&A)

  • 「厚顔無恥 」の対義語は?
  • 「厚顔無恥 」を英語、中国語で言うと?
  • 「厚顔無恥」は褒め言葉として使えるか?
  • 「厚顔無恥」はビジネスシーンで使える?

「厚顔無恥 」に関するよくある疑問は上記の通りです。

ここからそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。

「厚顔無恥」の対義語は?

「厚顔無恥(こうがんむち)」は、「恥を知らずに図々しいこと」を意味する四字熟語です。

では、これと反対の意味を持つ表現には、どのようなものがあるのでしょうか?

ここでは、「厚顔無恥」と対になるような美徳を表す言葉を紹介し、違いやニュアンスを解説します。

対義語・反対の意味を持つ言葉意味例文
廉恥心(れんちしん)正しい行いをしようとする気持ち(=廉)と、恥を知る心(=恥)のこと。道徳や節度をわきまえた、誠実でまじめな心を表します。「厚顔無恥」が“恥を知らずに図々しい”のに対し、「廉恥心」は“恥を知り、正しくあろうとする心”という、真逆の価値観を表しています。彼は常に廉恥心を持って行動しており、信頼が厚い。
謙虚(けんきょ)自分を偉いと思わず、控えめで素直な態度のこと。厚かましく自己中心的な態度とは正反対で、「謙虚」は他人への敬意や節度を大切にする姿勢を表します。成功しても謙虚な姿勢を崩さない彼は、多くの人に慕われている。
慎み深い(つつしみぶかい)言動に気をつけ、礼儀を守ろうとする態度。恥を知る心があること。「慎み深さ」は恥じらいや配慮を伴う振る舞いを意味し、「厚顔無恥」の対照に位置します。彼女は慎み深く、言葉遣いにも品がある。

「厚顔無恥」の根本にあるのは、「恥を感じない」「自分を顧みない」といった心理です。

したがって、その反対には「自分の行いを省みて慎む心=恥を知る心」がある言葉がぴったりです。

以上の対義語である「廉恥心」「謙虚」「慎み深い」などは、人としての美徳や品性を表す表現です。

日常の中でも、「厚顔無恥」な態度は避け、これら対義語のような姿勢を心がけたいものですね。

「厚顔無恥」は英語・中国語でどう表現する?

「厚顔無恥(こうがんむち)」と同様の意味を英語や中国語で表現する場合、どのような言い回しがあるのでしょうか?

それぞれの言語での代表的な表現を紹介します。

英語表現意味例文
shameless(シェイムレス)恥を知らない、恥じる気持ちがないHe is completely shameless.(彼は本当に恥知らずだ。)
brazen(ブレイゼン)厚かましい、ずうずうしい、図々しいShe made a brazen attempt to take all the credit.
(彼女はすべての手柄を取ろうと図々しく試みた。)
have the nerve / have the audacity大胆にも、ずうずうしくも~するHe had the nerve(audacity)to lie to the boss.(彼は上司に平然とウソをついた。)

 

中国語表現意味例文
厚颜无耻(hòu yán wú chǐ)面の皮が厚くて恥を知らない(=厚顔無恥)他真是厚颜无耻,说谎也不脸红。
(彼は本当に厚顔無恥で、嘘をついても顔色一つ変えない。)
不知羞耻(bù zhī xiū chǐ)恥を知らない你这样做,简直是不知羞耻
(君のやっていることは、まったく恥知らずだ。)
死皮赖脸(sǐ pí lài liǎn)図々しく、恥をかくことを恐れないさま(直訳:顔の皮が死んでいて張りついている)他总是死皮赖脸地求别人帮忙。(彼はいつも図々しく人に助けを求める。)

「厚顔無恥」はもともと中国の古典に由来する四字熟語であり、日本語にも古くから取り入れられています。

今日では日本語としても定着しており、日常的にも使われる表現となっています。

「厚顔無恥」は褒め言葉として使えるか?

いいえ、「厚顔無恥(こうがんむち)」は基本的に相手を批判・非難する否定的な表現として使われます。

「ずうずうしい」「恥知らず」といった意味を持つため、褒め言葉として使用するのは適切ではありません

むしろ、皮肉として意図的に使うケースもありますが、その場合も相手に不快感を与える可能性があるため注意が必要です。

「厚顔無恥」はビジネスシーンで使える?

ビジネスシーンで「厚顔無恥」という言葉を直接的に使うことは避けた方が良いです。

攻撃的な印象を与える可能性が高く、関係性の悪化やトラブルの元になりかねません。

例えば社内で「彼は厚顔無恥だ」などと発言するのは誹謗中傷と受け取られる可能性があります。

代わりに、「自己主張が強い」「遠慮がない」など、やや柔らかい表現で置き換えるのが無難です。

まとめ:「厚顔無恥」の意味や使い方を理解しよう

「厚顔無恥」という言葉には、図々しく恥を知らない人物を鋭く批判する強いニュアンスが込められています。

日常会話で使う場面は限られますが、ニュースや評論、文学作品などでは今なお目にする機会のある表現です。

この記事では、「厚顔無恥」の意味だけでなく、その語源、類義語や対義語、英語・中国語での表現にも触れました。

特に、語源が中国最古の詩集『詩経』にあるという歴史的背景を知ることで、言葉への理解が一層深まったのではないでしょうか。

今後、似たような場面に出会ったときに、適切な言葉を選び、自信を持って表現できるよう、本記事がその一助となれば幸いです。