日常会話やニュース、ドラマなどで耳にすることのある「破廉恥(はれんち)」という言葉。
どこか強い非難のニュアンスを感じさせるこの言葉ですが、実際にはどのような意味を持ち、どんな場面で使うのが適切なのでしょうか。
本記事では、「破廉恥」の正確な意味や使い方をわかりやすく解説するとともに、例文や類義語、語源、そして英語・中国語ではどう表現されるのかまで丁寧にご紹介します。
言葉のニュアンスを正しく理解することで、表現の幅が広がり、より豊かな日本語表現が身につくはずです。
「破廉恥」の意味をしっかりと理解して、言葉を正しく使いこなしましょう。
「破廉恥 」の読み・意味は?
意味:<名・ダ>恥知らず。▼~行為 *ハレンチとも書く。出典:デイリーコンサイス国語辞典
「破廉恥」は、はれんちと読みます。
音読みだけで構成されており、日常的な読みとは少し離れているため、漢字を見ただけでは読みづらいと感じる人もいるかもしれません。
「破廉恥(はれんち)」の意味は、「恥を知らず、道徳や倫理に反するような行動や態度をとること」です。
たとえば、社会的常識に反した言動や、周囲に配慮せず自己中心的にふるまう行為などに対して、「破廉恥な行為」「破廉恥な態度」などと用いられます。
文脈によっては、不倫やスキャンダル、過激な服装や性的な描写など、性的に不適切とされる言動に対して使われることもあります。
非常に強い否定的なニュアンスを持つ言葉であり、人や行動を非難する場面で用いられることが多いため、使用には注意が必要です。
「破廉恥 」の例文・使い方
「破廉恥(はれんち)」という言葉は、社会的モラルに反する行為や、恥を知らない態度を批判する場面で使われます。
ここでは、実際にどのような場面で使えるのか、例文を交えてわかりやすく解説します。
日常的なシーンでの使用例
報道・ニュース文脈での使用例
性的なニュアンスが含まれる例
使い方の注意点
強い否定のニュアンスがあるため、軽々しく人に使うと失礼になる場合があります。
やや古風または文語的な響きがあるため、日常会話よりも文書・報道などの書き言葉でよく使われます。
性的な意味で受け取られる場合もあるため、文脈に注意して使う必要があります。
「破廉恥 」の同義語・言い換えや類義語は?
同義語・類語 | 意味 | 例文 |
恥知らず(はじしらず) | 恥の感覚がまったくなく、ずうずうしい人や行動を指します。口語的で直接的な非難表現。 | 他人の手柄を平然と横取りするなんて、まったくの恥知らずだ。 |
厚顔無恥(こうがんむち) | 「顔の皮が厚く、恥を知らない」という意味の四字熟語で、反省や遠慮のない態度を冷ややかに批判する表現です。文語的で硬め。 | 非を認めず堂々としている彼の姿は、まさに厚顔無恥だ。 |
不道徳(ふどうとく) | 社会的・倫理的に望ましくない行為を指す、やや客観的・中立的な言葉。 | その発言は教育者として不道徳だと批判されている。 |
下劣(げれつ) | 品性や知性に欠け、言動が下品で劣っていること。侮蔑的な響きを伴う。 | 彼の下劣な冗談に、誰も笑えなかった。 |
卑劣(ひれつ) | 手段や考え方が卑しく、人の道に外れた行為をすること。裏切りや陰湿さを含む非難語。 | 信頼していた相手を裏切るなんて、彼は卑劣すぎる。 |
無恥(むち) | 恥を感じる心がまったくないこと。文語的・硬質な響き。 | 他人に迷惑をかけても平気な顔をしているなんて、無恥そのものだ。 |
デリカシーがない | 他人の気持ちや場の空気に対する配慮が欠けている様子を指します。軽めで日常的な表現。 | 人が落ち込んでいるときにそんなことを言うなんて、デリカシーがないよ。 |
以上の通り、「破廉恥」と近い意味を持つ言葉は多数ありますが、それぞれニュアンスや使われる場面が異なります。
表現の強さや印象を考慮しながら、状況に合った言い換えを選ぶことが大切です。
「破廉恥 」の由来・語源は?
「破廉恥(はれんち)」という言葉は、現在では「恥知らず」「道徳に反する行為」などを非難する強い表現として使われていますが、実はその語源をたどると、古い中国語に由来していると考えられます。
この章では、「破廉恥」という言葉の成り立ちや歴史的背景を詳しく見ていきましょう。
■ 「破廉恥」は漢語由来の言葉
「破廉恥」は、日本語における漢語(中国から伝わった言葉)であり、各漢字の意味を分解すると、以下のようになります。
- 破:こわす、こわれる、破るなどの意味
- 廉:清廉、正直、品行方正などを表す語
- 恥:恥ずかしい、羞恥心を持つこと
この語の構造から、「破廉恥」とは本来、「清廉さや恥を打ち壊す=道徳的な良心を持たないこと」を意味すると解釈されます。
「破廉」という語自体は中国古典に広く登場するわけではありませんが、「廉(れん)=清廉な心」を破るという構成から、「破廉恥」は日本で意味を形成していったと考えられます。
日本でも明治末から大正期以降にかけて、新聞や書籍などのメディアを通じて「破廉恥」という語が広く使われるようになりました。
当初は政治家や公人の不正・不品行などを非難する表現として使われ、のちに性的スキャンダルを含む幅広い不道徳行為に対する非難語として定着しました。
特に昭和期(1950〜70年代)には、テレビや週刊誌、新聞などで「破廉恥な行為」「破廉恥罪」といった表現が頻繁に使われ、世間的なインパクトのある言葉として定着します。
また、性的な描写や過激な言動に対しても「破廉恥」という語が使われるようになり、現在では「恥知らずで不道徳なこと」「性的に不適切な行為や態度」など幅広い意味を持つようになりました。
「破廉恥」は、もともと中国の古典において「廉恥(れんち)=恥を知る心」を破る=「道徳に反すること」として使われた表現が、日本に伝わり、発展した言葉です。
現代では、不正やスキャンダル、さらには性的な意味合いまで含む強い非難語として使われています。
言葉の背景を理解することで、「破廉恥」という表現の重みや使いどころをより的確に判断できるようになります。
「破廉恥 」に関するQ&A
- ・「破廉恥 」の対義語は?
- ・「破廉恥 」を英語、中国語で言うと?
「破廉恥 」に関するよくある疑問は上記の通りです。
ここからそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。
「破廉恥 」の対義語は?
「破廉恥(はれんち)」という言葉と反対の意味を持つ言葉にはどのようなものがあるのでしょうか?
この章では、「破廉恥」の対義語としてふさわしい語を、意味や用例とともに紹介します。
対義語 | 意味 | 例文 |
廉恥(れんち) | 清廉さと恥を知る心。道徳的に正しく、羞恥心を持っていること。 | 彼の行動には廉恥の精神が感じられ、信頼がおける。 |
節操(せっそう) | 道徳・信念・貞操などをしっかり守ること。流されず、自制心を保つ態度。 | どんな誘惑にも流されない彼女の節操のある態度には敬意を抱く。 |
品行方正(ひんこうほうせい) | 行いが礼儀正しく、道徳的で模範的なさま。社会的評価が高い人物像。 | 学生時代から品行方正で知られた彼は、今でも多くの人から信頼されている。 |
自重(じちょう) | 自分の言動を慎み、軽率な振る舞いを避けること。自己管理や節度の表れ。 | 社会人としての自覚を持ち、常に自重した態度を心がけたい。 |
「破廉恥 」を英語・中国語で言うと?
「破廉恥(はれんち)」という言葉の意味は、英語や中国語ではどのように表現できるのでしょうか?
この章では、「破廉恥」に近いニュアンスを持つ英語表現と中国語表現を紹介し、それぞれの意味や使い方も解説します。
【英語表現】
英語 | 意味 | 例文 |
shameless | 恥を知らない、図々しい | He is a shameless liar.(彼は恥知らずな嘘つきだ) |
immoral | 道徳に反する、倫理的でない | Their behavior was deeply immoral.(彼らの行動は極めて不道徳だった) |
indecent | 不適切な、わいせつな(特に性的な意味で) | The movie was banned for indecent content.(その映画はわいせつな内容で禁止された) |
disgraceful | 恥ずべき、名誉を汚すような | His disgraceful behavior shocked everyone.(彼の恥ずべき行動は皆を驚かせた) |
「破廉恥」にぴったりと一致する英単語は存在しませんが、以上のような表現が文脈に応じて使われます。
使用場面に応じて、道徳・性的・社会的な意味合いから最も適切な語を選ぶ必要があります。
【中国語表現】
中国語でも、「破廉恥」に相当するいくつかの表現があります。
日本語と同じ語を使うケースもあれば、やや異なる表現もあります。
「耻」は、「恥(はじ)」の異体字で、恥ずかしいという意味です。
中国語 | 意味 | 例文 |
不知廉耻(bù zhī lián chǐ) | 恥を知らない、恥知らず(もっとも直訳的で対応) | 他做出那种事,真是不知廉耻。(あんなことをするなんて、本当に恥知らずだ) |
无耻(wú chǐ) | 恥知らず、厚顔無恥、道徳心がない | 他是个无耻的小人。(彼は恥知らずの小人物だ) |
败坏道德(bài huài dào dé) | 道徳を壊す、品行が悪い | 她的行为败坏道德。(彼女の行為は道徳を損ねている) |
淫秽(yín huì) | わいせつな、みだらな(性的な意味合いに特化) | 他因散布淫秽视频被捕。(彼はわいせつ動画を流布して逮捕された) |
中国語では、状況に応じて「不知廉耻」や「无耻」が一般的な非難語として広く使われます。
まとめ:「破廉恥 」の意味・例文を理解しよう
「破廉恥(はれんち)」とは、恥を知らず、社会的・道徳的に反する行為を平然と行うことを強く非難する言葉です。
日常生活の中では、「破廉恥な態度」「破廉恥な行為」などの形で使われ、非常に強い否定的ニュアンスを持つ表現です。
もともとは儒教的価値観における「廉恥(清らかさと羞恥心)」という考え方に基づいて生まれた語ですが、時代が進むにつれて性的な意味合いを持つケースも増え、使い方には注意が必要です。
また、「破廉恥」の対義語には「廉恥」「節操」「品行方正」など、品位や節度を重んじる言葉が挙げられます。
英語や中国語でも場面に応じて「shameless」「不知廉耻」などに訳されることがありますが、完全に同じ意味を持つ単語は少なく、文脈を踏まえて適切に選ぶことが重要です。