花を持たせるの例文とは?意味・使い方・類語・対義語・由来・英語を解説!

人との関わりの中で、あえて自分ではなく相手を立てる場面は少なくありません。

そんなときに使われる日本語表現が「花を持たせる」です。

ビジネスシーンや日常会話で耳にすることも多いこの慣用句ですが、似た表現として「華を持たせる」「花を添える」との違いに迷う人も少なくありません。

さらに、「花を持たせる」の使い方や類語・対義語、英語での表現方法などを知っておくと、表現の幅がぐっと広がります。

この記事では、「花を持たせる」の例文をはじめ、同義語や由来、言い換え表現まで網羅的に解説します。

慣用句「花を持たせる」の読み・意味は?

勝利や手柄をわざと譲る。  出典:デイリーコンサイス国語辞典

「花を持たせる(はなをもたせる)」は、相手に名誉や手柄を譲って立てることを表す慣用句です。

本来、自分が評価されてもよい場面であっても、あえて相手を主役にし、その人の功績や存在感を引き立てるときに使われます。

例えば、会議や発表の場面で自分がまとめたアイデアを部下に発表させるときや、スポーツチームで最後の得点を仲間に決めさせて称賛を集めさせるような場面などが挙げられます。

つまり「花を持たせる」とは、相手を立てて良い気持ちにさせる行為を意味するのです。

また、この表現は人間関係を円滑にするための配慮や思いやりを示す言葉でもあります。

日常会話だけでなく、ビジネスやフォーマルな文章の中でもよく用いられる慣用句です。

「花を持たせる」の例文・使い方

「花を持たせる」は、相手に手柄を譲ったり、功績を立てさせたりすることで、その人の名誉や面目を立てる意味を持つ慣用句です。

ここでは、実際の使い方と例文を紹介します。

 

部下や同僚に対して

自分と同等、あるいは立場が下の人に対して使うのが自然です。

努力や成果を引き立てたいときに適しています。

例 文

今回の企画は、新人の野口君の案ということにして発表を任せ、花を持たせようと思う。
彼の努力を認めて、最後の発表を彼に任せ、花を持たせた

 

友人や仲間に対して

仕事以外の人間関係でも、相手を立てる場面で使えます。

例 文

結婚式では主役の二人に花を持たせるために、余計な演出は控えた。
試合では後輩に花を持たせる形で、自分は一歩引いた。

 

上司や目上の人に対して

注意が必要なのは、上司や目上の人に対しての使用です。

直接「部長に花を持たせます」と言うと、「目上の人に功績を譲ってあげている」という上から目線の響きになり、かえって失礼と受け取られることがあります。

ただし、第三者に説明する場面では自然に使えます

例 文

社長に花を持たせるために、このプロジェクトの最後を任せた。
先輩に花を持たせる形で、プレゼンのまとめをお願いした。

 

ポイント

同僚や部下に対しては積極的に使える表現。

上司・目上には直接使わず、第三者への説明で用いると自然

「花を持たせる」の同義語・言い換えや類義語は?

ここでは、「花を持たせる」と同じような意味を表す同義語や言い換え表現、類義語を紹介します。

同義語・言い換え・類義語意味・ニュアンス例文
顔を立てる相手の面目を保つように配慮すること。彼の顔を立てるために、あえて反論は控えた。
引き立てる相手を目立たせたり、良さを際立たせること。後輩の努力を引き立てるために、彼に発表の場を譲った。
栄誉を譲る本来自分が得られる名誉を相手に譲ること。プロジェクト成功の栄誉を若手メンバーに譲った
効を譲る手柄や功績を自分ではなく相手のものとすること。成果の効を譲り、表彰の場には部下を立たせた。
相手を立てる相手の立場や体面を重んじて、敬意を示すこと。議論ではあえて相手を立てるようにして場を和ませた。
面目を保たせる恥をかかせず、体裁を守らせること。取引先の担当者の面目を保たせるため、こちらが一歩引いた。

以上の言葉はいずれも「相手に名誉や面目を与える」という点で共通しており、状況に応じて使い分けることで、表現がより豊かになります。

「花を持たせる」の由来・語源は?

この章では「花を持たせる」の由来・語源について解説します。

「持たせる」という動詞には、「相手に持たせてあげる」「自分ではなく相手にゆずる」といったニュアンスがあります。

したがって「花を持たせる」とは、自分ではなく相手に栄誉をゆずり、その人を立てるという意味合いになるのです。

 

由来の背景

古くから日本文化において花は、美しさや華やかさだけでなく、名誉や栄光の象徴として扱われてきました。

特に武士社会や礼儀を重んじる文化の中では、勝負や議論で自分が優勢であっても、あえて最後に相手に「勝ちを譲る」ことが美徳とされる場面が多くありました。

その際に「花を持たせる」という表現が用いられるようになったと考えられます。

 

古典や文学での「花」の使われ方

日本の古典文学や芸能においても、「花」は栄誉や華やかさを象徴する存在として頻繁に登場します。

武士の潔い最期や名誉を重んじた死に様が後世に「花と散る」という言葉で表現されたり、江戸時代の歌舞伎や芝居では「花形役者」という言葉が生まれ、舞台で最も栄誉を受ける役者を指すようになりました。

このように「花」は、単なる美的な存在以上に、日本人の美意識や価値観を反映した象徴的な言葉だったのです。

 

現代においても「花を持たせる」は、ビジネスや人間関係の場で広く使われています。

会議や交渉、または日常会話の中で「相手に手柄を立てさせる」ことは、良好な人間関係を築くための知恵のひとつと言えるでしょう。

 

関連する表現

「花を持たせる」と同じように、「花」を名誉や魅力の象徴として使う日本語表現はいくつもあります。

花形役者 … 舞台や映画で中心となる人気の役者

勝負に花を添える … 出来事をより華やかにする

花と散る … 名誉を保ったまま死ぬこと

あの人には花がある … 人を引きつける華やかさ・魅力を持っている

これらの表現もすべて、「花=栄誉・華やかさ・人を立てるもの」という共通したイメージを持っています。

「花を持たせる」という慣用句も、こうした文化的背景から自然に生まれ、今もなお使われ続けているのです。

「花を持たせる」に関するQ&A

  • 「花を持たせる」の対義語は?
  • 「花を持たせる」と「華を持たせる」の違いとは?
  • 「花を添える」との違いとは?
  • 「花を持たせる」を英語で言うと?

「花を持たせる」に関するよくある疑問は上記の通りです。

ここからそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。

「花を持たせる」の対義語は?

「花を持たせる」とは、相手に栄誉や名誉を譲り立てることを意味します。

それでは、この慣用句の反対の意味、つまり自分を優先して相手を立てない行動を表す言葉はあるのでしょうか。

以下に、「花を持たせる」の対義語として使える言葉を、意味と例文とともに紹介します。

 

対義語・反対の意味の言葉意味例文
自分を誇る(じぶんをほこる)自分の功績や能力を誇示し、他人を立てない態度。成功は部下の支えあってのものなのに、彼は自分ひとりの力だと自分を誇っていた
出しゃばる(でしゃばる)必要以上に前に出て目立とうとすること。会議でいつも出しゃばる彼のせいで、チームの意見が通りにくい。
自己顕示(じこけんじ)自分の存在や能力を人に見せつけること。彼女のSNSは自己顕示ばかりで、他人を褒めることが少ない。
我田引水(がでんいんすい)自分の利益ばかりを優先して行動すること。彼は会議で我田引水ばかりして、チームの意見を無視した。
自己中心(じこちゅうしん)自分のことしか考えず、他人を立てない態度。プロジェクトの成功よりも自分の功績を優先する自己中心な行動は避けるべきだ。
独善的(どくぜんてき)他人の意見を無視して自分の考えだけを押し通すこと。彼の独善的なやり方では、チームはまとまらない。
主導権を握る(しゅどうけんをにぎる)状況や話し合いの中心を自分でコントロールしようとすること。会議で主導権を握ろうとばかりするあまり、部下の意見を聞かない。
先んじる(さきんじる)他人より先に行動する、先取りする。彼は新しいプロジェクトに先んじて手をつけたため、チームメンバーの意見が活かされなかった。

以上の通り、「花を持たせる」の対義語は、相手を立てず、自分を優先する行動を表す言葉すべてが該当します。

状況に応じて、動詞・四字熟語・ことわざなど、適切な表現を使い分けることがポイントです。

「花を持たせる」と「華を持たせる」の違いとは?

日本語には似たような表現がいくつかありますが、「花を持たせる」と「華を持たせる」は見た目が似ているため混同されやすい表現です。

しかし、意味や使われ方には明確な違いがあります。

 

1. 「花を持たせる」の意味

意味:相手に栄誉や名誉を譲り立てること。相手を立てる、ほめるニュアンスで使われます。

使い方:相手を目立たせたり、功績を認めたりするときに用います。

例文:彼の努力を認めて、ここは花を持たせることにした。

 

2. 「華を持たせる」の意味

意味:外見や雰囲気を華やかにする、見栄えを良くすること。主に物事や状況を華やかに演出するニュアンスがあります。

使い方:イベントや展示、服装やデザインなど、見た目や雰囲気を華やかにする場合に使われます

例文:

会場を華を持たせるために、花や照明で装飾した。
新商品の展示コーナーに色鮮やかなディスプレイを置いて、華を持たせた
パーティーでは、ドレスコードを工夫して参加者に少しずつ華を持たせるようにした。
店頭に季節の小物を飾って、店全体に華を持たせた雰囲気にしている。

「花を添える」との違いとは?

「花を添える」という表現は、日常でもよく使われますが、「花を持たせる」と混同されやすい表現です。

ここでは「花を添える」について詳しく解説します。

「花を添える」の意味

意味:すでにある物事や出来事をより引き立てる、彩りを加えること

主役となるものがすでに存在しており、その価値や魅力を高めるために付け加えるニュアンスがあります。

「花を添える」の使い方・例文

プレゼントに手紙を添えて、気持ちに花を添えた
スピーチの最後にユーモアを加えて、話に花を添えた
デザートにフルーツを盛り付けて、見た目に花を添えた
会場に季節の飾りを置いて、全体の雰囲気に花を添えた

以上の通り、「花を添える」は、すでにあるものに彩りや魅力を加える表現です。

文章や贈り物、演出などに使うことが多く、人を立てる「花を持たせる」とは意味の焦点が異なります。

状況に応じて使い分けることがポイントです。

「花を持たせる」を英語で言うと?

「花を持たせる」は、相手に栄誉や名誉を譲り立てる、日本語独特のニュアンスを持つ表現です。

英語でも完全に同じニュアンスの一語はありませんが、文脈に応じて自然に置き換えることが可能です。

 

英語表現意味例文
Give someone credit功績や努力を認める、評価を与えるWe should give her credit for her hard work on the project.
(そのプロジェクトでの彼女の努力を評価すべきだ。)
Let someone take the lead主導権や注目を相手に譲るIn the meeting, I decided to let him take the lead on the presentation.
(会議では、プレゼンの主導権を彼に譲ることにした。)
Let someone shine相手を立てて輝かせるShe organized the event to let the young performers shine.
(彼女は若い出演者たちが輝けるようにイベントを企画した。)
Put someone in the spotlight相手を目立たせる、注目させるHe put his team in the spotlight during the award ceremony.
(表彰式で彼はチームを目立たせた。)

 

花を持たせる」を英語で表現する際は、文脈に応じて以下の表現が自然です。

give someone credit(功績を認める)

let someone take the lead(主導権を譲る)

let someone shine / put someone in the spotlight(相手を立てて目立たせる)

状況に応じて使い分けることで、日本語の「花を持たせる」に近いニュアンスを伝えることができます。

まとめ:「花を持たせる」の意味・例文を理解しよう

「花を持たせる」は、相手を立てることで人間関係を円滑にし、場の雰囲気を和らげる日本語ならではの表現です。

誰かの功績や努力を認める行動は、信頼や尊敬を育むきっかけにもなります。

日常生活や仕事の中で、つい自分を前に出したくなる場面もありますが、時には相手に「花を持たせる」ことで、思いやりや配慮を示すことができます。

この小さな気遣いが、周囲との関係をより良くし、豊かなコミュニケーションにつながります。

ぜひ、文章や会話の中で自然に相手を立てる表現を取り入れ、「花を持たせる」の精神を実践してみてください。

「誰かに花を持たせると、あなたの周りにも自然と花が咲く。」