「また御託を並べて……」
日常会話やドラマのセリフでこんな言葉を聞いたことはありませんか?
一見すると難しそうな表現ですが、「御託を並べる」は、理屈っぽく、もっともらしいことをくどくど話す様子を表す慣用句です。
ちょっと辛辣なニュアンスを含むため、使い方には注意が必要な言葉でもあります。
本記事では、「御託を並べる」の意味や使い方、例文、由来、さらには類義語や英語・中国語での表現まで、分かりやすく丁寧に解説します。
言葉のニュアンスを正しく理解して、日常会話や文章表現の幅を広げましょう。
慣用句「御託を並べる 」の読み・意味は?
意味:くどくどと(-理屈)を言うこと。▼~を並べる*ご託宣の略。出典:デイリーコンサイス国語辞典
「御託を並べる(ごたくをならべる)」とは、もっともらしいことや理屈をあれこれと並べ立てることを意味する慣用句です。
多くの場合、相手の発言や態度をやや否定的に捉える場面で使われ、「聞き飽きた」「言い訳がましい」といったニュアンスを含みます。
「御託」とは、もともと仰々しい言葉や儀式的な言い回し、もっともらしい理屈を指します。
「並べる」は、それらを次々と口に出す様子を表しており、合わせることで「くだらない理屈や口実を次々と口にすること」を揶揄(やゆ)する表現となっています。
たとえば、ビジネスの現場や人間関係の中で、話の本質からズレた理屈を並べて相手を納得させようとする様子を、「御託を並べるな」と批判的に表現することがあります。
「御託を並べる 」の例文・使い方
「御託を並べる」は、理屈や言い訳を長々と述べることを指し、相手の発言や態度を否定的に評価するときに使われる表現です。
実際の会話や文章でどのように使われるのか、例文とともに使い方を確認していきましょう。
■ 基本的な使い方のポイント
使う場面:言い訳、弁解、言葉だけで済ませようとする態度に対して
ニュアンス:批判的・皮肉を込めた言い回しが多い
主に三人称で使うが、自分に対しても自嘲的に使うことがある
■ 例文で理解する「御託を並べる」
→ 行動より言葉ばかり多い相手に対して、いら立ちを表現。
→ 表面的な意見ばかりで実行が伴わない様子。
→ 自嘲的に使った例。自分が言い訳ばかりしていたことを反省。
→ はっきりとした決断を求める場面で使う強い言葉。
■ 会話での使用例(カジュアルな口調)
A:「でもさ、時間がなくて準備できなかったんだよ」
B:「また御託を並べて……。言い訳ばっかりじゃん」
→ 友人同士の会話でも使われる、くだけた印象の用法です。
■ 使用時の注意点
相手を責める表現になるため、使い方に注意が必要です。
目上の人やビジネスの場では避けるか、表現を和らげましょう。
例:「もう少し要点を簡潔にまとめていただけますか?」などに言い換える
「御託を並べる」は、くどくどと理屈を言う様子や、言い訳がましい態度に対して批判的に使う表現です。
日常会話では少し辛辣な印象を与えることもあるため、使い方には注意が必要です。
状況に応じて、柔らかい表現に言い換えることも選択肢の一つです。
「御託を並べる 」の同義語・言い換えや類義語は?
この章では「御託を並べる」と似た意味を持つ言葉や、状況に応じて使い分けできる言い換え表現・類義語を紹介します。
同義語・類義語 | 意味 | 例文 |
言い訳をする | 自分の失敗や過ちを正当化しようとする発言をする。 | 宿題を忘れた理由を先生に言い訳していた。 |
くどくど言う | しつこく同じことを繰り返し述べて、聞いている側がうんざりする、 | 母がまたテストのことをくどくど言い始めた。 |
講釈を垂れる | 偉そうに理屈を述べる。知識をひけらかすような、押しつけがましい話し方。 | 先輩が武士道について講釈を垂れてきたが、正直興味がなかった。 |
理屈をこねる | 納得できないような無理な理屈を述べて、反論する。 | 子どもが注意された後、理屈をこねて反発してきた。 |
長々と話す | 要点を絞らず、だらだらと話を続ける。 | 会議で彼が長々と話すせいで、予定時間をオーバーした。 |
口先だけ | 立派なことを言うが実行が伴わない。信頼できない人物に対する評価として使われる。 | あの人は口先だけで、いつも行動が伴わない。 |
屁理屈を言う | 道理に合わない、こじつけのような反論をする。 | 彼は都合が悪くなると、すぐ屁理屈を言い出す。 |
能書きを垂れる | 自分の知識や技術を誇示するように語る。商品の宣伝や自慢話として用いられることが多い。 | 店員が商品の機能について能書きを垂れていたが、正直ピンとこなかった。 |
口ばかり動かす | 実際の行動をせず、口で言うだけで終わること。 | あの上司は口ばかり動かして、現場を見たことがない。 |
「御託を並べる 」の由来・語源は?
「御託を並べる(ごたくをならべる)」という慣用句は、現代では「聞き飽きた理屈や、くどくどとした説明を並べ立てる」というやや否定的な意味で使われています。
しかしその語源をさかのぼると、もともとは格式ある言葉に由来しています。
「御託」とは何か?
「御託(ごたく)」とは、元来「御託宣(ごたくせん)」の略語です。
御託宣(ごたくせん)とは、神仏の意思を人に伝える言葉で、特に神のお告げとしての言葉を意味します。
神社などで神官が民に対して伝える神意の表明です。
古くはこの「御託」は非常に尊いものであり、人々にとって信仰の対象となるような神聖な言葉でした。
なぜ否定的な意味に?
時代が下るにつれ、「御託宣」のような権威ある言葉も、形骸化した形式的な儀式の中で、ただ長々と語られるだけのものになっていきました。
そこから転じて、
「中身のないありがたい話」
「くどくどとありがたそうに話す言葉」
といったような、ありがたそうに語るが実際には煩わしいだけの話を「御託」と呼ぶようになったのです。
そして、それを「並べる(次から次へと語る)」ことで、
「御託を並べる」=くどくどと理屈ばかり語る、ありがたそうなことを並べ立てる
という現在の意味になりました。
以上の通り「御託を並べる」という言葉は、もともとは「神のお告げ」=「御託宣」に由来する、格式の高い言葉でした。
しかし時代の変化とともに、「ありがたそうに語るが、実は中身のない話」というニュアンスを帯び、現在ではくどい理屈や無駄話を長々とするという皮肉や否定の意味で使われるようになりました。
語源を知ることで、表現に含まれる歴史や文化的背景も見えてきます。
何気なく使う言葉の奥深さを感じさせてくれる好例といえるでしょう。
「御託を並べる 」に関するQ&A
- 「御託を並べる 」の対義語は?
- 「御託を並べる 」を英語、中国語で言うと?
「御託を並べる 」に関するよくある疑問は上記の通りです。
ここからそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。
「御託を並べる 」の対義語は?
「御託を並べる」に対する反対の意味を持つ表現はどのようなものがあるのでしょうか?
「御託を並べる」が「言葉数が多い」「理屈っぽい」「まどろっこしい」ことを表すのに対して、その対義語となるのは「簡潔に言う」「行動で示す」といった、余計なことを言わず、端的に物事を進める姿勢を表す言葉です。
以下、いくつか例を挙げます。
対義語 | 意味 | 例文 |
黙って行動する | 言葉よりも行動で示すこと。 余計な説明をせず、手早く動くことを評価する場面で使われる。 | いちいち説明せず、黙って行動する彼の姿勢に信頼が集まる。 |
単刀直入 | 前置きなしに核心を突くこと。 話が簡潔で明快なこと。 | Aさんはいつも御託を並べるけれど、Bさんは単刀直入で話しやすい。 |
一言で済ます | 多くを語らず要点だけ述べる。 説明や意見を端的に表現する態度。 | プレゼンでは一言で済ますぐらいの要点整理が求められることもある。 |
口より手を動かせ | 話してばかりいないで、実際に行動しろという意味。 指示や説教が多すぎる人に向けての皮肉も含む。 | うるさい説教よりも、口より手を動かせってことさ。 |
言わぬが花 | 言わないほうがよいこともあるという意味のことわざ。 美徳として沈黙を尊ぶ考え方。 | ここは言わぬが花だよ、あえて言葉にしないほうが美しい。 |
「御託を並べる」は、くどくどと理屈を並べるネガティブな印象のある表現です。
その対義語は、簡潔さや実践重視、沈黙の美徳を重んじる姿勢を表す言葉です。
場面によっては、あえて「御託を並べない」態度が効果的なこともあるでしょう。
言葉の使い分けを意識して、より適切な表現を選びましょう。
「御託を並べる 」を英語・中国語で言うと?
ここでは 「御託を並べる」と同様の意味を持つ英語と中国語の言葉をご紹介します。
英語表現 | 意味 | 例文 |
make excuses | 言い訳をする | He always makes excuses when he doesn’t finish his work. (彼は仕事を終えられないとき、いつも御託を並べる。) |
talk a lot of nonsense | くだらないことを長々と言う | She talked a lot of nonsense during the meeting and confused everyone. (彼女は会議中にくだらない話を長々とし、みんなを混乱させた。) |
beat around the bush | 遠回しに言う、核心を避けて話す | Stop beating around the bush and tell me what really happened. (御託を並べるのはやめて、本当のことを言ってください。) |
go on and on | だらだらと長く話す | He went on and on about his problems without offering a solution. (彼は御託を並べて、自分の問題を解決せずに話し続けた。) |
babble on | まとまりなく話し続ける | She babbled on for hours, but I didn’t understand anything important. (彼女は何時間も御託を並べたが、重要なことは何も分からなかった。) |
中国語表現 | 意味 | 例文 |
废话连篇 (fèi huà lián piān) | 無駄話を連ねる | 他讲话废话连篇,让人听得很烦。 (彼は御託を並べて話し、人をイライラさせる。) |
空谈 (kōng tán) | 空しい議論、無意味な話 | 会议上大家只是空谈,没有实际行动。 (会議ではみんな御託を並べただけで、実際の行動はなかった。) |
说废话 (shuō fèi huà) | 無駄話をする | 别说废话了,赶快做事吧。 (御託を並べるのはやめて、さっさとやりなさい。) |
兜圈子 (dōu quān zi) | 遠回しに言う | 他总是在兜圈子,不直说重点。 (彼はいつも御託を並べて、要点をはっきり言わない。) |
まとめ:「御託を並べる 」の意味・例文を理解しよう
「御託を並べる」は、意味のないことや言い訳をだらだらと話す様子を表す言葉で、話が回りくどくなったり、肝心なことを言わずにごまかしたりする場面でよく使われます。
相手の発言が冗長で要領を得ないときに、「御託を並べている」と表現することで、そのもどかしさや不快感を的確に伝えることができます。
言葉の意味や使い方を正しく理解することは、日常のコミュニケーションを円滑にし、自分の考えをより適切に表現する力にもつながります。
今回学んだ「御託を並べる」も、ぜひ会話や文章の中で活用してみてください。
伝え方の幅が広がり、表現に深みが増していくはずです。