「縁の下の力持ち」の意味は?例文・使い方・類義語・由来を解説

私たちの身の回りには、目立たないけれども、陰で大きな力を発揮している人がいます。

そんな存在を表すことわざが「縁の下の力持ち」です。

会社での裏方作業、家庭内でのサポート、チームプレーにおける支え役など、あらゆる場面で使われるこの言葉には、日本人らしい感謝や敬意の気持ちが込められています。

この記事では、「縁の下の力持ち」の正確な意味や読み方、具体的な使い方や例文、類義語との違い、そして由来について詳しく解説していきます。

言葉の背景を知ることで、より深く使いこなせるようになりますよ。

ことわざ「縁の下の力持ち」の読み・意味は?

意味:人目につかない陰で頑張るーこと(人)。出典:デイリーコンサイス国語辞典

「縁の下の力持ち(えんのしたのちからもち)」とは、人目につかないところで努力や苦労を重ね、物事を支えている人(こと)をたたえる言葉です。

目立つ存在ではないけれど、その人がいなければ成り立たないような役割を果たしている人(こと)に対して使われます。

このことわざは、日本家屋の構造をもとにした表現です。

昔の日本の家屋には「縁側(えんがわ)」と呼ばれる通路のような部分があり、その下に潜って支える作業は、外からは見えにくく、地味でありながら非常に重要なものでした。

「縁の下」で重たい構造を支える力持ちのように、裏方で支える存在の尊さが込められているのです。

たとえば、イベントの裏方を担うスタッフや、家庭を陰で支える家族、チームの成功を支える事務担当など、現代のさまざまなシーンでこのことわざは当てはまります。

表舞台に立たない人にこそ光を当てる、日本らしい感謝と敬意のこもった表現だと言えるでしょう。

「縁の下の力持ち」の例文・使い方

「縁の下の力持ち」は、日常会話からビジネス、学校生活に至るまで、さまざまな場面で使われることわざです。

目立たない場所で努力を重ねている人への感謝や敬意を表すときに使われます。

 使い方のポイント

対象は「目立たずに支えている人」:主役ではなく、裏方の存在に対して使います。

賞賛やねぎらいの意味を込めて使う:感謝や尊敬の気持ちを表現する際に最適です。

自分に使うことも可能ですが、やや謙遜のニュアンスを含みます。

 例文

ここでは一般的、ビジネス、学生などの場面に合わせた例文をご紹介します。

一般的なシーン

イベントの成功は、縁の下の力持ちであるスタッフたちのおかげだ。
彼はいつも表には出ないけれど、チームの縁の下の力持ちとして欠かせない存在だ。
家事や育児を助けてくれる祖母は、まさに縁の下の力持ちだ。

ビジネスシーン

会議がスムーズに進むのは、資料を事前に準備してくれるスタッフという縁の下の力持ちがいるからだ。
技術部門は表には出ないが、会社全体の成長を支える縁の下の力持ちだと思う。

学生・学校生活

クラスの掲示物を毎日こっそり直してくれるあの子は、縁の下の力持ちだね。
部活の用具を毎日整えてくれるマネージャーは、縁の下の力持ちとしてみんなを支えてくれている。

このように、「縁の下の力持ち」は陰で頑張る人への敬意を表す美しい日本語です。

正しく使えば、相手との信頼関係も深まります。

「縁の下の力持ち」の同義語・言い換えや類義語は?

目立たない場所で努力し、人や組織を支える「縁の下の力持ち」。

この意味を持つ類義語表現には、さまざまなニュアンスがあります。

以下では、それぞれの言葉の意味と例文を紹介します。

同義語・類義語意味例文
陰の立役者(かげのたてやくしゃ)表には出ないが、成功や成果の影にいる重要な存在。 プロジェクトが成功したのは、陰の立役者である事務スタッフの尽力があってこそだ。
裏方(うらかた) 舞台やイベントなどの表に出ず、支援や準備を担う人たち。この舞台の成功は、裏方のみなさんの細やかな仕事のおかげです。
黒子(くろこ)舞台で演者を目立たせるために、目立たず補助をする存在。転じて、目立たない支援者。彼は黒子として、チームの全員をサポートしてくれている。
名脇役(めいわきやく)主役を引き立てる存在で、全体の完成度を高める役割を担う人。あの選手は名脇役として、スター選手の実力を最大限に引き出している。
簀の子の下の舞(すのこのしたのまい)舞台下など、誰にも見られない場所で行われる努力。目に見えない働き。「簀子」とは、舞台の天井や縁などに使われる板や竹を隙間をあけて並べた建具。あの資料は彼女が簀の子の下の舞のように、誰にも気づかれずにまとめてくれた。
内助の功(ないじょのこう)表に出ない妻や家族の支えによって成り立つ功績。彼があそこまで出世できたのは、妻の内助の功があったからだ。
縁の下の掃除番(えんのしたのそうじばん)誰も気づかない場所で、地味な仕事を黙々とこなす人。彼はまさに縁の下の掃除番。毎朝早く出社して、オフィスを整えてくれている。
鴨の水掻き(かものみずかき)表面は穏やかに見えても、水面下では必死に努力していることのたとえ。あの人はいつも余裕そうに見えるけど、実は鴨の水掻きのように陰で努力を重ねている。

「縁の下の力持ち」に近い意味を持つ表現は、それぞれ異なる背景や使い方を持っています。

表に出ない支えの大切さを伝えるとき、文脈に応じて最もふさわしい言葉を選ぶことで、相手への敬意や感謝をより豊かに表現することができます。

「縁の下の力持ち」の由来・語源は?

「縁の下の力持ち」ということわざは、日本の伝統的な家屋の構造と人の姿を結びつけた表現に由来します。

古い日本家屋では、建物の外周部に「縁側(えんがわ)」と呼ばれる板張りの廊下のような空間があり、その下の見えない部分を「縁の下」と呼びます。

「 縁の下」とはどんな場所?

「縁の下」は、家の土台にあたる場所で、普段人の目に触れることはほとんどありません。

しかしその中には、建物を支える柱や土台が張り巡らされ、家屋全体の安定性を保っています。

つまり、表からは見えなくても非常に重要な部分なのです。

「力持ち」が表すのは?

「力持ち」とは、字の通り力の強い人を指します。

「縁の下の力持ち」とは、建物を見えないところで支える力強い存在=人の働きを表す比喩として用いられるようになりました。

 

日本では、目立たないところで努力を重ねる人を尊ぶ文化があります。

特にチームや組織の中で、表に立つ人だけでなく、その背後で支える人々の存在に感謝するという価値観が根付いてきました。

そのため、「縁の下の力持ち」という言葉は、控えめながらも重要な貢献をする人をたたえる表現として、長く使われてきたのです。

「縁の下の力持ち」という言葉は、日本家屋の「縁の下」という構造と、「力持ち」の人の姿を掛け合わせて生まれた表現です。

表舞台には立たずとも、大きな責任や重荷を支えている人の存在をたたえる、美しい比喩と言えるでしょう。

「縁の下の力持ち」に関するQ&A

  • 「緑の下の力持ち 」の対義語は?
  • 「緑の下の力持ち 」を英語、中国語で言うと?

「緑の下の力持ち 」に関するよくある疑問は上記の通りです。

ここからそれぞれの疑問について詳しく解説していきます。

「縁の下の力持ち」の対義語は?

「縁の下の力持ち」は、人知れず努力し、陰で支える人を指すことわざです。

それに対して、「表立って活躍する人」や「目立ちたがりな人」を意味する言葉が対義語として挙げられます。

以下にいくつかの表現を紹介します。

対義語・反対語意味例文
花形(はながた)舞台やスポーツ、芸能などで最も目立ち、活躍する中心人物。彼はチームの花形として、常に注目を集めている。
主役(しゅやく)物語や舞台で中心となる人物。または、物事の中心的存在。今回のプロジェクトの主役は、間違いなく彼女だ。
表舞台の人(おもてぶたいのひと)人前に立ち、注目を集める立場の人。彼は常に表舞台の人で、どんな場でもスポットライトを浴びている。
目立ちたがり屋(めだちたがりや)人の注目を集めたがる性格の人。彼は目立ちたがり屋で、会議でも常に発言したがる。
自己顕示欲が強い(じこけんじよくがつよい)自分を目立たせたい、自分の存在や成果を他人にアピールしたいという気持ちが強いこと。彼は自己顕示欲が強く、何か成果があるとすぐにSNSで報告する。

「縁の下の力持ち」を英語・中国語で言うと?

「縁の下の力持ち」は日本語特有のことわざですが、これに相当する意味を持つ英語や中国語の表現にはどのようなものがあるのでしょうか?

それぞれの言語における代表的な言い回しをご紹介します。

<英語での表現>

英語表現意味例文
Unsung hero(無名の英雄)「unsung(アンサング)」という言葉は、英語の「sing(歌う)」の過去分詞「sung」に、否定を表す接頭辞「un-」を付けたもので、「称えられていない」「歌われていない」という意味になります。転じて、功績を認められることなく、陰で努力している人を指します。She’s the unsung hero of this project, doing all the behind-the-scenes work.(彼女はこのプロジェクトの縁の下の力持ちで、舞台裏のすべての仕事をこなしている。)
Behind-the-scenes supporter(舞台裏の支援者)*someone behind the scenes behind the scenesとは舞台裏のこと。目立たないところで活動し、成功を支える人。*黒子、影武者He worked as a behind-the-scenes supporter to make the event a success.(彼はそのイベントを成功させるために、舞台裏で支援する役割を果たした。)
The one who works in the background(背景で働く人)表には出ないが、重要な役割を担っている人。While the manager gets the praise, it’s really his assistant who works in the background.(マネージャーが称賛を受けているが、実際に背景で働いているのは彼のアシスタントだ。)

その他にも、Backseat player(控えめな役割の人)やThankless job(感謝されない仕事)などがありますが、ニュアンスが多少違っています。

Backseat player(控えめな役割の人)目立たず後方で動く人。チームや組織の中で、リーダーシップを取らずに支える立場の人。単に目立たないだけでなく、「主導権を握らない人」「受け身の立場にいる人」という印象もあるため、やや消極的なニュアンスが含まれることがあります。「unsung hero」のような賞賛のニュアンスは薄め。He prefers to be a backseat player, letting others take the spotlight.
(彼は縁の下の力持ちとして、他の人が目立つことを好む。)
Thankless job(感謝されない仕事)他人のために働いても、感謝されることがほとんどない仕事。「縁の下の力持ち」が果たす役割に当てはまることが多いですが、「報われない」「やりがいがない」というネガティブな響きが強く出る場合があります。Raising children can often feel like a thankless job, but it’s deeply meaningful.(子育ては縁の下の力持ちのような感謝されにくい仕事だが、とても意義深い。)

<中国語での表現>

中国語表現意味例文
幕后英雄(mùhòu yīngxióng)縁の下の力持ち(直訳:裏方の英雄)她是这个项目的幕后英雄,默默地支持着整个团队。(彼女はこのプロジェクトの縁の下の力持ちで、黙ってチーム全体を支えていた。)
默默奉献的人(mò mò fèng xiàn de rén)黙って尽力する人。他是一个默默奉献的人,从来不求回报。(彼は縁の下の力持ちで、決して見返りを求めない人だ。)
无名英雄(wú míng yīng xióng)名前の知られていない英雄(unsung hero と同義)。清洁工人是这个城市的无名英雄。(清掃員たちはこの街の縁の下の力持ちだ。)

これらの表現を使うことで、「縁の下の力持ち」という日本語特有のニュアンスを、外国語でも効果的に伝えることができます。

英語でも中国語でも、それぞれの文化で同じような尊敬の念が込められていることが分かりますね。

まとめ:「縁の下の力持ち」の意味・例文を理解しよう

「縁の下の力持ち」とは、人目につかない場所で、目立つことなく努力し続ける人を称えることわざです。

これは、日本の文化に根付く「謙遜」や「和を尊ぶ心」を反映しており、自らを誇らずとも他人の成功や集団の調和を優先する姿勢が背景にあります

表に出ずとも、支えてくれている人たちがいるからこそ、物事はうまく運びます。

この日本らしい美徳を再認識し、あなたの周りの“縁の下の力持ち”に、感謝の気持ちをそっと伝えてみてはいかがでしょうか。